不採用が続きマイナス思考に、50社応募の末に入社

 「帰国後に、大手転職サイトやハローワークを利用して企業への応募を始めましたが、書類の段階で落とされることがほとんどでした。面接に進んだとしても、30歳まで日本での就業経験がないことがネックとなり、断られることが多かったんです。

 不採用が続くと、自分の経歴の中で何をアピールすればいいのか分からなくなり、『私のことを雇ってくれる会社なんてどこにもない』と思うようになりました。自分と似た経歴の人も周りにいなかったので、誰かに相談することもできず、どんどんマイナス思考になっていきましたね」

日本での就業経験がないことが原因で、不採用が続きマイナス思考に
日本での就業経験がないことが原因で、不採用が続きマイナス思考に

 孤独で先の見えない転職活動に陥った三枝さんは、50社ほど応募した末に、ようやく食品や酒類の輸入販売をする小規模な貿易会社から内定をもらいます。しかし、当時は年収や労働環境など、条件面を検討する余裕もなくなっていたといいます。

 「自信をなくし、『働かせてくれる会社だったらどこでもいい』という心境でした。振り返って考えてみると、不採用が続いたのは経歴そのものがダメだったわけではなく、職務経歴書でも面接でも、相手がどういう人材を求めているのかを考えていなかったことが原因だと思います。書類でも面接でも、インターネットで見つけてきたテンプレートのような答えしか用意していなかったんです」

 苦戦した転職活動の末に入社した貿易会社では、海外の仕入れ先との価格交渉や在庫管理、発注、納期管理などの貿易事務と、社長のアシスタントとして、商談の通訳や資料の翻訳、海外顧客のアテンドなども行っていたといいます。