38歳で転職を決意するも断念

 この貿易会社には9年勤務していましたが、転職を考えるようになったのは、「年々増していく業務量に対して、給与が上がらないことに疑問を感じたから」と三枝さん。

 「当時の年収は、ボーナスも含めて390万円。経験を積んだ上で交渉をすれば、いずれ年収も上がっていくだろうと思って働いていたのですが、業績の悪化でボーナスがカットされることもあり、上がるどころか下がることもありました。社長の意思で物事が決まるトップダウン型の組織だったため、社長面談で年収アップの交渉をしたこともありますが、『そんな余裕はない』と取り合ってもらえませんでした」

 昇給の見込みがないと悟った三枝さんは、38歳のときに転職をしようと思い立ちます。しかし、彼女の思いとは裏腹に、登録したエージェントからは「紹介できる案件がない」と言われたそうです。

 「なぜ紹介できる案件がないのか、その理由は怖くて聞けませんでした。当時は頑張って働いても評価されることがなく、毎日夜遅くまで働いて心身共に疲れ切っていたので、自己評価が低くなっていたんです。自分がやっていることに価値を見いだせる状況ではなかったので、『紹介できる案件がない』と言われた時点で心が折れて、『やっぱり自分は求められていないんだ』と思い、すぐに転職を諦めてしまいました

 一度は諦めた転職でしたが、三枝さんは1年後に再び転職活動を開始し、39歳のときに110万円の年収アップ転職に成功します。

 彼女はどのようにして、自己評価の低さを乗り越えて年収アップ転職を達成したのでしょうか? 転職成功のポイントは、後編でお伝えします。

下編「挫折から再起し39歳で年収110万円アップした転職法」では、次のストーリーを展開

■39歳で再起して転職活動をスタート
■伴走者を見つけて孤独な転職活動から脱却
■利用した転職サイト・転職エージェントは?
■内定が出ず、1カ月間転職活動を休止
■転職成功の秘訣は、○○の書き方
■昇給してさらに年収アップ、入社前に確認すべきことは?
■即戦力人材を目指して、英語の勉強は欠かさない

取材・文/青野梢(日経xwoman doors) イメージ写真/PIXTA