管理職を一度は辞退、なぜ?

 「当時在籍していた制作部門で、『課長として部下をマネジメントする側に回らないか』と声がかかったのですが、私は現場仕事が楽しかったですし、管理職になる覚悟も持てなかったので、最初は課長昇進の話を断りました。直属の上司が、部下一人ひとりと真剣に向き合いながらマネジメントをする方だったので、自分がその役割を果たせるとも思えませんでした」

 一度は昇進の話を断った藤本さんですが、上司にあることを見抜かれ、課長になることを決めたといいます。

 「『一度チャレンジしてみてダメだったら現場仕事に専念するのもいいけれど、挑戦する前に逃げるのは違うよね』と、私の臆病さや覚悟のなさを見抜かれたんです。それで私も考え直し、『逃げるのはやめてチャレンジしてみよう』と思えたので、課長としてマネジメント経験を積むことにしました」

「私の臆病さや覚悟のなさを見抜かれたので、『逃げるのはやめてチャレンジしてみよう』と思い、課長としてマネジメント経験を積むことにしました」
「私の臆病さや覚悟のなさを見抜かれたので、『逃げるのはやめてチャレンジしてみよう』と思い、課長としてマネジメント経験を積むことにしました」

マネジメントに全力投球し、部長職を目指せるポジションに

 実際に課長になると、「視野が広がった」と藤本さんは語ります。

 「それまでは、組織全体のことを考えるよりも、私個人のやりがいを追求して仕事をしていました。でも、課長になったことで初めて、『自分の部署は組織内でどういう役割を担い、どんな成果を出さなければいけないのか』『部下一人ひとりが自分の価値観に基づき、組織の中でどのような価値を発揮できるようにしていくのか』といった俯瞰(ふかん)的な視点を得ることができました

 また部下育成についても力を注ぎ、チームの信頼関係を築いていったといいます。

 「自分を育ててくれた上司が、目の前の仕事のことだけでなく、部下の人生や未来も含めて話をし、真剣に怒ったり励ましたりしてくれる方だったので、私もそのやり方を受け継ぎ、部下と全力で向き合っていました。部下から『飲みに行きたい』と言われれば夜中でも駆けつけましたし、『相談したいことがある』と言われれば業務時間外でも話をして、時間もエネルギーもすべてマネジメント業務に注いでいたんです」

 その結果、課長に昇進してから約5年が経過した2020年ごろには、上司から「部長を目指してみる?」と声をかけられるまでに。しかし、この話が再びキャリアの転機となり、藤本さんは「転職」を考えるようになりました。