震災の現場で感じた「こだわり」を減らすことの意味
―― 仕事をする上で、こだわっていることはありますか?
小川 うーん……。これは正解ではないかもしれませんが、物理的なこだわりは、あまり持たないようにしているんです。2011年に起きた東日本大震災の直後に被災地を取材したとき、物資が足りない現場を数多く見てきました。そこで強く感じたのは、「こだわっていられない」ということ。物理的なこだわりをそぎ落としていかなければ、取材が成り立たなかったんです。
ペンや手帳などにこだわりがあるのも、もちろんすてきなことだと思います。でも、何かにこだわっていると、知らず知らずのうちにその対象物に依存してしまう可能性もありますよね。それがないと不安になったり、必要な手順を踏まないと自分そのものが崩れてしまったり……。
アナウンサーは、突発的な事件にも対応しなければならない「臨機応変さ」が必要とされる仕事です。だからこそ、いつでも、どこにいたとしても、すぐに取材に行けるように、心の準備も万全にしています。
マイルールは「背伸びしない」こと そして「人として謙虚でいる」こと
―― 社会人として「こうありたい」という理想像はありますか?
小川 「人として謙虚でありたい」と思っています。キャリアを重ねて経験値が高まると、人はついつい「これはこういうものだ」と決め付けたり、知ったかぶりをして自分を格好良く見せたりしたくなりますよね。私自身、変なプライドが出てきてしまったなと感じたこともありました。
ニュースチャンネルAbema Newsの帯番組「Abema Prime」への出演が決まったことを、社会人1年目の頃に『サンデープロジェクト』で一緒に仕事をさせていただいた田原総一朗さんに伝えたとき、「知ったかぶりだけはするな」と言われたんです。実は、社会人1年目のときにも同じことを言われました。「背伸びをしない、学ぶ姿勢を忘れてはいけない」と。この言葉は、いつも大切にしていますね。
それで、「ここまでは自分で勉強しよう」と決めて、準備をしておくようになったんです。「ある程度の知識は自分の中にある。それ以上深い話になったら教えてもらおう」と自信を持って言えるスタンスになるまで努力して、自分を高めておくことが大切だと思います。
専門家と共に1つのニュースや時事問題を分かりやすく掘り下げる「Abema Prime」に出演中の小川アナ。謙虚な姿勢の裏側には、実体験から築き上げた揺るぎない「マイルール」がありました。皆さんの揺るぎない「マイルール」は何ですか?
取材・文/華井由利奈 写真/大槻純一 構成/浜田寛子(日経doors編集部)