視聴者コメントは毎日チェック

―― 地上波で放送されていたテレビ番組も、公式サイトなどで視聴者がコメントを送れるようになっていますが、放送後にコメントを読む機会はありましたか?

小川 以前出演していた『報道ステーション』は、放送後にコメントが一覧になって送られてきていました。多いときは100件以上ありましたね。メインキャスター(当時)の古舘伊知郎さんは、「1つのコメントの後ろには、何百、何千という人がいる。そう思いながら読者の声に向き合っている」とおっしゃっていました。

実際に視聴者の方々に会える機会は少なく、貴重な意見をもらえる場は限られています。だからこそ、番組に寄せられたご意見やご指摘は毎日大切に読み、言葉から伝わってくる温度を一つひとつ感じ取るようにしていました。

異動も1つのチャンス 「自分自身の変化」に気付けるのが楽しい

―― 小川さんにとって、番組から番組への「異動」はどのような経験でしたか?

小川 景色が変わるきっかけでした。Abema Primeは「一つの物事を違う視点で見る」という試みに積極的に挑んでいる番組です。そのチームの一員になることで、少数派の意見や他文化の思想など、今まで知らない間に通り過ぎてきてしまった問題が見えるようになりました。「自分が信じてきたもの」があり、その上で「それだけが全てじゃない」というのを日々突き付けられる感じ。「全く異質なもの、分からないもの」と思っていたことに対しても「理解できる」ということが分かれば、そこから「本当の議論」ができるんだろうなと思いました。

異動をして新しい環境に飛び込むと、思いがけず壁にぶつかったり、迷ったりすることもありますよね。でも、視界が開けて今まで考えなかったような問題を深掘りすることで、そこからまた新しく「何か」が始まることもある。Abema Primeでは、様々な社会問題に対して識者や当事者の話を聞き、「根っこの部分」に触れる機会が増えたので、私自身も気付きがたくさんありました。

また、Abema Primeに出演されるコメンテーターの皆さんは、各分野の専門家で、一個人として働いています。そうした方々と接する機会も増え、私自身、アナウンサーとしてのキャリアや働き方を考えるきっかけにもつながりましたね。自分自身の変化に気付くのも、仕事における一つの楽しみだと私は思っています。


小川アナのように、様々な場所で経験を重ねて物事の「違い」や問題の「本質」を考えることが、着実なステップアップにつながるのかもしれません。悩みや迷いは自分を成長させてくれる糧と考えて、少しずつ視野を広げていきたいですね。

取材・文/華井由利奈 写真/大槻純一 構成/浜田寛子(日経doors編集部)