「結婚」がキャリアパスを考えるきっかけに

―― フリーへの転身について考え始めたのはいつごろでしたか?

小川 昨年からです。気付けば私も30代前半。「そろそろ自分の将来を考えなきゃ」と思っていたら……あれ?いつの間にかアラフォーに近づいている!?って(笑)。さらに結婚が現実的になり、今後の働き方について考えるようになりました。

 そのとき真っ先に感じたのは、「子どもを産むとしたら時間は限られている」ということです。子どもがいたら、今の社会的な環境の中ではフルスロットルで仕事に向き合うのは難しくなるかもしれません。結婚や出産によって人生観や目標が変わるとも聞くので、将来「仕事よりも子どもとの時間を重視したい」と思う可能性もあります。

 自分がどう変わっていくのかは、私自身にも分かりません。ただ、新しい挑戦ができるとしたら今しかないと思いました。

退職すべきか 私の背中を押してくれた番組

―― 2018年10月より司会進行役を務めていたAbemaTV『Abema Prime』を辞めることについて悩みはありましたか?

小川 司会進行役として日々責任を感じながら取り組んでいたので、途中で投げ出すと迷惑が掛かってしまうのではないかと悩みました。でも私自身、この番組に「自分の人生を開拓していくことの貴さ」を教えられることが多く、少しずつ背中を押してもらっていたんです。

 『Abema Prime』は、自分の名前で働いている人が集結した番組でした。出演者は、どこの組織にも所属せず、過去の経験を強みに変えて発信している人々。発言一つひとつが自分の言葉になっていて、実感を伴ってキラキラと輝いていました。そういう人たちを見て、自分の足で立って生きる大切さを実感することが多かったんです。

 また、病気や障害をテーマにする機会も多く、元がん患者の方や、乾癬(かんせん)に悩む方、パニック障害の方、妊娠中に風疹にかかり闘病した女性など、様々な方に接する機会がありました。そんな中で、「人生いつ何があるか分からない。今を大切にしなければ」と感じたのも確かです。

「行動を起こさなかったときの後悔は大きい」 周囲からのアドバイス

―― フリーアナウンサーになることについて、誰かに相談しましたか?

小川 家族や友人、会社の仲間にもよく相談しました。特に今までお世話になった先輩には何度も話を聞いてもらって……。「自分の人生を生きなさい」「行動を起こさなかったときの後悔のほうが、行動してからの後悔よりも大きい」など、シンプルだけれど心に響くアドバイスをいただきました。

「自分の人生を生きなさい」――。周りの方からのアドバイスに、背中を押されました
「自分の人生を生きなさい」――。周りの方からのアドバイスに、背中を押されました

 自分でもこの選択が正解かどうかは分かりません。後で「あのとき選んだ道は正しかった」と思えるように、これから前進していくしかないっていう気持ちでいます。ちょっと遅すぎるかもしれませんが、私にとって今は「足場固め」の時期。人生を進めていく自信を付けるためにも、自分の足で立つ強さを身に付けていきたいです。


 小川さんは最後に「これからどんな人生になるか分からないけれど、あらゆる変化を新鮮な気持ちで受け入れながら、自然体で自分らしく生きていきたい」と語ってくれました。キャリアチェンジに不安は付きもの。小川さんのように変化を恐れず、チャンスを自分の力に変えていきたいですね。

(*)6月11日に放送されたラジオ番組では、萩本欽一さんは今年5月に大学を自主退学したことを明らかにした。

取材・文/華井由利奈 写真/大槻純一 構成/浜田寛子(日経doors編集部)