数々の報道番組で活躍している小川彩佳さんに、キャリア形成の秘訣を聞く連載企画「アナウンサー・小川彩佳のnext doors」。今回は、フリーアナウンサーに転身した理由に迫ります。大きな決断をする前に、小川さんの背中を押したものは何だったのでしょうか。

ミレニアル世代の7割が「自分の名前で働きたい」

―― ミレニアル世代向けのあるアンケート調査によると、22~34歳の働く女性の約7割が「個人名で働きたい」と答えているそうです。小川さんも個人名で働くフリーのアナウンサーに転身しましたが、この結果を見てどう思いますか?

小川 これほど多いとは思っていなかったので驚きました。自分の好きなことが明確な人が増えてきたからこそ出た結果ですよね。世の中の価値観が変わってきた証拠だと思います。

 好きなことといえば、以前BS朝日で放送されていた田原総一朗さんの番組に出演させていただいたとき、萩本欽一さんと田原さんの対談がありました。萩本欽一さんは70代で大学に通い始めたそうです。(*)

 田原さんと萩本さんは「60歳で定年を迎えて引退しても、好きなことはできていない。今から何をしたらいいのか分からない人が多いんだよね」と話していました。大学で学ぶシニア層が増えているのは、組織の中でがむしゃらに働いてきた世代が自分探しをしたり、好きなことに向き合ったりするからだそうです。そうなると、20〜30代で「好き」を仕事にしたいと思えるって、すごいことですよね。

自信はない それでもフリー転身を決めた理由

―― 小川さんも、アナウンサーという仕事に憧れてテレビ局に入社したんですよね。

小川 アナウンサーになりたいという気持ちは、確かにありました。でも、ごく一般的な大学生だった私にとって、確固たる自信を持って「私にはこんな能力があります」と打ち出せるものは何もありませんでした。

 今年(2019年)の4月までテレビ朝日に勤め、アナウンサーとして修業を積んできましたが、組織にいる安心感と、バックボーンがある強みに甘んじていた部分があったと思います。それだけに、一人で道を切り開いていかなければならないフリーアナウンサーへの転身は、我ながら驚きの決断でした

 不安も当然あり、今も自分の名前で仕事をしていく自信がみなぎっているわけではありません。でも一方で、「動けるうちに踏み出しておかないと後悔する」という漠然とした思いもあったんです。自分の名前で働く強さを持つために、私は外の世界へ踏み出しました。

フリーへの転身は不安もありましたが、「動けるうちに行動をしないと後悔する」という漠然とした思いもありました
フリーへの転身は不安もありましたが、「動けるうちに行動をしないと後悔する」という漠然とした思いもありました