SKE48を2017年に卒業した矢方美紀さん。その後乳がんが見つかり、現在は治療を続けながらも精力的に活躍中の26歳です。2月から、矢方さんが今ハマっていることや、病気になって初めて気付いたことなどを書きつづる連載「矢方美紀のあかさたな」がスタートします。連載開始の前に、矢方さんに乳がんについて話を聞きました。

乳がん発見は「セルフチェック」がきっかけ

 2009年から2017年までの約7年半、SKE48のメンバーとして活躍していた矢方美紀さん。声優という夢に向かうためSKE48を卒業した翌年、乳がんであることを公表します。

 「今まで、食生活が乱れていたわけでもなく、特に大きな病気にかかったこともなかったので、当たり前のように『自分は健康だろう』と思ってました」と語る矢方さん。

 それまでは、テレビなどの情報で乳がんについては見聞きしていたものの、「検診に行きましょう」といった勧めには「ちょっと勇気がいるなぁ……」と身構えてしまっていたそう。

 そこで矢方さんは、病院に行く前に「自分でもチェックできることがあるのでは?」と、自分で胸を触る「セルフチェック」の方法を調べてみることに。

 チェック方法通りにベッドに寝て胸を触ってみたところ「左胸の上のほうに硬いしこりがあったんです。『これは一体何なんだろう?』と」。SKEを卒業した年の、12月のことでした。

 「AKBグループは水着で撮影することが多いから、少しでもバストアップして奇麗に見せられるように……と、日ごろからバストマッサージをする習慣があって。その習慣があったからこそ、乳がんに気付くことができたと思っています」

 それまで、「がんは痛いもの」というイメージがあった、と矢方さん。

 「でも触った時、痛くなかった。だからがんじゃなくて、もう少したてば(しこりがなくなって)治るのかな、って。けれど、1週間ほどたってもしこりは消えず、知り合いの年上女性に相談。そうしたら、『今すぐ病院に行きなさい』と言われて。それで病院へ行き、検査をした結果乳がんが発覚しました」

手術に挑んだのは「自分の人生を楽しみたい」から

 「主治医の先生から、『全摘しましょう』と話があった時、最初は受け入れられませんでした。『なんで、胸を切らなきゃいけないの?』『わたしは温存できないの?』って」

 矢方さんはこの時25歳、「AYA(あや)世代」に当たります。AYAとは、一般的に15歳から39歳ぐらいまでの年齢層の人を指す「Adolescent and Young Adult(思春期や若年成人)」の略で、医学の分野で用いられることが多い用語です。

 AYA世代は、就業や恋愛、結婚、出産などさまざまなライフイベントが集中する時期。周囲が仕事やプライベートを楽しんでいる中、これからの不安や孤独を感じている人も少なくありません。AYA世代のがんは、成人とはまた違った悩みや課題があるのです。

 それまで乳がんはどんな手術方法があるのか、どんな治療をするのか全く知らなかったと語る矢方さん。その後、先生や周囲の人の意見をたくさん聞き、だんだんと理解を深めていくうちに、改めて気づいたことがあったんだそう。

 それは、「人生ってまだまだ続くんだ、ということ。私は自分の人生をもっと楽しみたいし、やりたいこともある。だから今、この病気を早く治したい」。そして矢方さんは、手術を決心します。