「年金だけでは老後生活で2000万円不足する」――2019年は厚生労働省が5年に1度行う公的年金の「財政検証」の年に当たりますが、その検証結果の発表前に金融庁がまとめた報告書をきっかけに、予想以上の騒動が起こりました。話題となっている公的年金の基本的な仕組みを知っておきましょう。

【7月のカレンダー】公的年金の基本の仕組みを知る

 騒動の発端は、2019年5月22日に公表された金融庁の「市場ワーキング・グループ」による「『高齢社会における資産形成・管理』報告書(案)」です。約50ページにわたる資料の一部をメディアが報道し、「年金だけでは老後生活で2000万円が不足する」という一節に注目が集まってしまったのです。

 元の文章には次のように書かれています。「夫 65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円」「20~30年の人生があるとすれば不足額の総額は単純計算で1300万~2000万円

 この内容に心を揺さぶられ「不安」をあおられないためには、年金の基礎知識と背景の理解が必要です。今後法改正もありますが、現状の仕組みを確認しましょう。

日本の年金は「世代間扶養」が大前提

 「公的年金」の制度を備える国は世界にも数多いのですが、その仕組みは大きく「積立方式」「賦課方式」の2つに分かれます。

 積立方式は、自分で納めた年金保険料は自分の年金のために積み立てられます。それに対して賦課方式は、自分が納めた年金保険料はそのときに年金をもらっている人のものとなります。

 日本の公的年金は、後者の賦課方式を取っています。私たち現役世代が年金受給者を支えているため「世代間扶養」ともいわれます。なお、年金には、高齢者がもらっている老齢年金だけではなく、障害年金遺族年金もありますので、障害のある方や大黒柱を失った遺族をも支えているのが年金保険料なのです。

 よく、「保険料を払っても元が取れない」という言葉を耳にしますが、そもそも世代間扶養なので元を取る・取らないという概念はありません。とはいえ、もちろん気持ちとしては理解できるので実情をお伝えすると、実際には、払うべき年金保険料を納めて平均寿命まで生きた場合、納めた保険料より多くの年金を受け取っています