第2子出産目前に訪れたチャンス。大切なのは「できるかどうか」ではなく……

 大学卒業後、監査法人に入所し、大きなプロジェクトのマネージャーも任されるようになった。ところが、長女を出産した28歳の頃から、「キャリア構築」への意識は薄くなっていった。というより、考える余裕がなくなっていたのだ。

「幼い子どもを育てながら仕事し、生活をしていくのがいかに大変か。それは出産前の想像を超えていました。毎日、目の前の業務と家事・育児をこなすので精一杯。今後のキャリアビジョンを描くような時間も心の余裕もありませんでした」

 31歳のとき、2人目を妊娠。あと数ヵ月で産休に入るタイミングで、梅木さんのキャリアの中で最大の転機が訪れる。当時の上司だったアメリカ人男性と日本人女性2人から呼び出され「シニアマネージャーへの昇進」を打診されたのだ。上の子どももまだ2歳。今でさえいっぱいいっぱいなのに……。「一晩考えさせてください」と告げ、帰宅して夫に相談した。「自信ないんだよね。どうしたらいいかな」「だったらお断りすればいいんじゃないの」「そうだよね」。翌日、上司たちに「できる自信がない。辞退したい」と伝えた。すると男性上司から思いがけない言葉が返ってきた。

「自信があるかないかではなくて、やってみたいかどうかを、私たちは聞いているんだ。君がやりたいと思うのならやってごらん。僕たちがサポートするから」

 その言葉に背中を押され、梅木さんは新たなポジションへのチャレンジを決めた。

 幸い、両親も夫も手厚くサポートしてくれた。しかし、子どもが熱を出せば保育園から急に呼び出され、早退しなければならないこともある。保育園へのお迎えのため、他のメンバーが残業していても先に帰らなければならないこともある。男性上司はそんな状況を理解し、「好きなときに来て、好きなときに帰っていい。事前に承認を取らなくていい。僕が特別な許可を与える」と言ってくれた。

 女性上司は、梅木さんが産休から復職する際、「一つだけお願いがある」と言った。「早く帰宅することを申し訳ないと思わないで。皆に申し訳ないと思うと、自分を追い詰めてしまう。それで辞められてしまうのが一番困る。長く働き続けてくれることが何よりの貢献なのよ」。

 そんな上司とチームメンバーに支えられ、梅木さんは経営に携わるポジションである「パートナー」へと昇進を果たした。

「女性って、謙虚な人が多いですよね。新しい役割や昇進の話があっても、『自分には無理じゃないか』って躊躇してしまいがち。私もまさにその典型的なタイプでした。でも『どうすればできるか』を考えた結果、周りの人の支援を受けることは、恥ずかしいことではないと気付いたんです。そして助けてもらいながらやっていくうちに『あれ!?意外に結構できるな』という手応えも得られるようになって、自分の中でスタンスが決まりました。『機会を与えられたら、まずやってみよう』と。『できるかわからないけど、やらせていただきます』。それを自分のルールにしたんです」