「BXT」の交差点に立つことが、理系女性のキャリアの可能性を広げる

 PwC Japanグループ エクスペリエンスセンター(※)長のアンドレア・ジョンソンさんの講演では、最初に「STEM」というキーワードが挙げられた。

※エクスペリエンスセンター=デジタルテクノロジーにより新たなイノベーションを共創する拠点として2017年に開設されたスペース。

 「STEM」とは、「Science」「Technology」「Engineering」「Mathematics」の頭文字を取った略語。科学・技術・工学・数学の教育分野の総称だ。STEM教育に力を注ぎ、グローバル競争力を持つ人材を育成する教育モデルは2000 年代に米国で始まり、世界に広がっている。

 アンドレアさんによると、アメリカにおいてSTEM分野の職業に就いている女性の割合は24%にとどまっており、グローバルではその割合はさらに低いという。また、一般的に給与が高いSTEM業界にあって、女性の給与は男性よりも低い状況。取締役クラスの女性も少ない。さらには女性がSTEM分野の職業に就いた場合、途中で辞めてしまう確率が男性より何倍も高いというデータがある。

「STEMの集結によって、今、新たなテクノロジーが生まれています。女性たちはもっとSTEMの業界に入ってくるべきだし、男性と同等、あるいはそれ以上に稼げるようになってほしい。そこでPwCでは、女性がSTEM分野でのキャリアパスを描けるような取り組みを進めています。それがイコール、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することなのです」

 ビジネスにおいてのダイバーシティとは多様な価値観や考え方を持つ人が組織にいること、インクルージョン(包摂)とはお互いに相手を尊重し、一人ひとりが生き生きと働けることを意味する。例えば、「席を与えること」と「発言を奨励すること」は似ているようで別物なのだ。PwC Japanは性別、国籍や文化の違いによる壁を取り払うほか、障がい者支援やLGBTインクルージョンにも注力。多彩な人材の融合により、イノベーションを起こしていくことを目指している。

「単に多様な人材がいればいいというだけでなく、『違いを重んじる環境』が必要なのです。さまざまな考え方や価値観を持ち寄ることで課題の解決につながるし、イノベーションも起こせる。インクルーシブな文化も生まれてきます。そして、大切な掛け合わせが『BXT』。Business×Experience×Technologyです。ビジネスの知見とテクノロジー、積み上げた経験を掛け合わせる。この3つが交差する部分が、まさにSTEM人材が活躍できるところ。ここに大きなチャンスがあります。BXTが交差する位置で、共に協力し合って社会の問題を解決していけるのは、とてもエキサイティングだと思います」

 PwCでは『HeForShe』への取り組みにも力を入れている。これは国連が推奨する、ジェンダー平等の実現を主に男性側がリードしていく活動。PwCは世界の推進企業10社のうちの1社に選ばれている。

「『盲点』というものがあります。自分でも気付かないうちに誰かを排除していたり、不公平な態度をとっていたり。それが常態化すると、成果を挙げた人を正当に評価しない、新たなチャンスを提供することもしない……といったことが起こりかねません。そうした『盲点』をなくすためにも、『ジェンダーIQ』の向上を図るプログラムを導入しています。これからもPwCは、女性たちが自分らしく力を発揮していける環境づくりを推進していきます」



参加者とPwC社員が複数のテーブルに分かれての座談会も実施。参加者からは「どんな研修があるのか?」「自分の専攻分野を活かせる仕事はあるか?」「働いていて面白さを感じることは?」などさまざまな質問が投げかけられた
参加者とPwC社員が複数のテーブルに分かれての座談会も実施。参加者からは「どんな研修があるのか?」「自分の専攻分野を活かせる仕事はあるか?」「働いていて面白さを感じることは?」などさまざまな質問が投げかけられた