「やりたいことが分からない」と悩める時間は幸せ

―― 夢の話が出ましたが、そもそも「やりたいことが見つからない」と悩む人もいますよね。

生駒 実は私も、「やりたいこと」をはっきりと自覚できているわけではありません。今は、誰かの前に立って何かをすることが好きだから、それを続けていくために芸能界で生きていきたい、というざっくりとした目標の中で進んでいます。

―― やりたいことが見つからない人に、何かアドバイスはありますか?

生駒 「やりたいことが分からない」と悩んでいる方は、やりたいことを見つけようと努力している人なのだと思います。だから、何の心配も要らないと思うんです。

―― 悩めるだけでも十分に幸せ、ということですね。

生駒 そうだと思います。世の中には、「やりたいことが分からない」という悩みを持たなくても、幸せを感じている方がいます。人それぞれだからこそ、「やりたいことが分からない」と悩めることも幸せなのではないでしょうか。

 先ほどお伝えしたように、夢をどうしてもかなえたいのであれば、苦しみ続ける必要があるでしょう。その苦しみの中で、「楽しい」と感じる瞬間が一瞬でもあれば、夢をかなえるために努力し続けることができるはずです。

やりたいことを見つける秘訣は、深い内省と新たな経験

―― 前田さんは「やりたいことが見つからない人」にどんなアドバイスをしたいですか?

前田 まずは、内省をたくさんしてみることだと思います。僕は自己分析がとても大事だと思っていて、大学生の時は「自分に関する問い」を1000問くらい自問したことがあるんです。

生駒 それだけ自分に問いかけたら、「自分のやりたいこと」は誰よりも分かりそうですね。

前田 まさに。ただ、人によっては、いくら内省してもやりたいことが見つからない場合もあります。そこで今すぐにできるもう一つの方法が、シンプルなのですが、「新しいことにチャレンジしたり、新しい人にたくさん出会ったりして、とにかく経験を増やす」ことです。

 僕が「たこわさの理論」と呼んでいることがあります。「地球が終わる最後の日に、あなたが食べたいものは?」と皆に聞くとします。この質問を例えば小学生にしたとして、まさか、「たこわさ」って答える子はいないと思うんです。つまり、「食べたことのないものを食べたい」と思う人はいない。

 これと同じように、知らないことや未経験のことを「自分の人生の夢にしたい」とは思えないはずです。経験していないことは、やりたい、とさえ思えないですから。

 だからこそ、もっと視野を広げて、いろいろな人に会ったり、たくさんの価値観に触れたりしながら、「私もこの人と同じ夢を持っているかもしれない」「この価値観に共感できる」というふうに、照らし合わせをしていくといいと思います。そのうちに、自分の価値観の軸がだんだんと見えてきて、やりたいことも見つかっていくのではないでしょうか。

―― 良いお話をお伺いできました。「変化の時代を生き抜く力」ということで、最後に何かメッセージがあれば。

前田 これからの時代、SNSなどで「個人がどれだけの力を持っているか」が可視化されやすくなり、個人はもっとプロジェクトベースで動くようになるでしょう。

 その中で個人が力をつけるためには、「熱を持てる何かを見つける」ことが必要です。そして、その「熱を持てる何か」を見つけるためには、自分の心を客観的に見つめるのが近道です。

 今までどんな時に自分は熱中してきたのか、そしてこれからの人生において、どんなことに熱中すると楽しそうなのか。こういった自分のモチベーションの源泉のようなものを見つける為には、やはり内省が一番効きます。できるだけ、自分と対話する時間を意識的に持っていただければと思います。

1987年東京都生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBS証券に入社。2011年、UBS Securities LLCに移りニューヨーク勤務を経た後、2013年にディー・エヌ・エー入社。“夢を叶える”ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」を立ち上げる。現在は、SHOWROOM代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。
1987年東京都生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBS証券に入社。2011年、UBS Securities LLCに移りニューヨーク勤務を経た後、2013年にディー・エヌ・エー入社。“夢を叶える”ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」を立ち上げる。現在は、SHOWROOM代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。

取材・文/流石香織 写真/稲垣純也