自分自身を「経営する」という視点で見てみたら?

鈴木 今日の2番目のテーマは、「わたしを経営する」としてみました。会社ではなくて「わたし」を経営する、ってどういうことでしょうか。

ハヤカワ 実はこのテーマは、私が思い付いたことを反映していただきました。会社とは個の集団で、それを経営するわけですが、会社の経営でやっていることや考え方は、一個人にも同じように当てはまると思うんです。

 会社には「お金」「人材」「技術」などの経営リソースがあります。それらのリソースをどう最大限に生かして目標に向かっていくかが経営では重要です。当然、ないリソースは割り切って、あるものを最大限生かすのが基本です。ところが一個人になった瞬間、自分が持っていないものや他人が持っているものについて、いろいろな言い訳が出てきがちです。「彼女は環境に恵まれていたから○○があるんだ」などと。

 そこで、「経営する」という視点でドライに自分を見てみると、「こんなスキルもあるな」「こういう攻め方もあるな」などと、広い視点で見ることができると思います。

鈴木 「経営する」という視点で自分自身を見る。とても新鮮ですね。

ハヤカワ 自分は経営者、社長じゃないから関係ない、ということではないのですね。社長という立場はスポットライトが当たりやすいけれど、社長の仕事だけが重要なのではなく、周囲にたくさんの人たちがいるからこそ成立しているんだと思います。私自身、もし社長じゃなかったらただの変人かもしれません。支えてくれる人たちがいてこその自分ですし、その人たち一人一人がとても重要な存在だとすごく感じます。

堀江 私の場合、社員やプロボノなどたくさんの方々と関わっていますが、社長にとって一番大事なのはビジョンだといつも思っています。自分がどういう社会にしていきたいのか、どういうところに行きたいのかというビジョンにみんながついてきてくれて、それが組織になっていくんです。講師として女性起業家を対象にした支援事業もしていますが、特に女性の場合は「100億円規模の会社にしよう」とか「社員は何人ぐらい」ということよりも、まずは「ありたい姿」や、「自分自身が3年後、5年後、10年後にどう生きていきたいか」といったビジョンが起点になるケースが多いですね。

鈴木 リーダーにとってビジョンは本当に大事だと思います。会場の皆さんも、仕事ではチームやプロジェクトのリーダーになったり、先輩として後輩を率いていたりと、いろいろなリーダーのスタイルを経験されていると思いますが、社長業も、チームやプロジェクトのリーダーも、共通する部分が大きいのではないでしょうか。

自分の「扉」を開けるときは周囲に発信する!

鈴木 今日の最後のテーマは、人生におけるいろいろな「扉、ドア」についてお聞きします。これまで開けてきたいろいろな扉、様々な転機についてお話しいただけますか。

ハヤカワ 自分の人生で、扉を開けてきたタイミングはいろいろあると思います。例えばパートナーとの関係とか、上司との関係にも「扉」があったと思いますね。昔、上司に言われたのと全く同じ言葉を、今部下に話しているなと気付く瞬間があって、あの時の言葉が実は「扉」だったんだなと。その時は気付かなかったけど、実は扉を開けてもらってたんだなと思うことは日々ありますね。

堀江 私自身は小さい頃から活動的なタイプだったので、一人でいろいろな扉を「これできるかな」と開けてみて、無理だったら閉じてみてと、柔軟に開けたり閉じたりしながら進んでいくのがすごく楽しかったですね。

 経営者になってみて感じるのは、自分一人よりも多くの人と一緒に進んでいくほうが世界が広がるし、メンバーを信頼して任せることが自分の成長にもつながるということです。そして、いろんな人に「自分はこうしたい」「こういう世界に行きたい」と発信していると、「それならこういう人を紹介するよ」と、閉まっていた扉が突然開いたり、なかった扉が突然現れたりといったことが起こるんです。他の人にどんどん発信して、力を借りながら扉を開けていくことも大事かなと思います。

思いを周囲に発信することで扉が開いていく!で意見が一致しました
思いを周囲に発信することで扉が開いていく!で意見が一致しました

ハヤカワ 他人に何かをお願いするのって難しいと思いがちですよね。でも、口に出してみたら実は同じことをしようとしている人がいたり、逆に自分が過去にやっていたことだったりと、同じ方向を向いている人がきっといます。人にお願いすると迷惑を掛けると思いがちですが、実は迷惑じゃないんですね。一緒に頑張れる人や、既に同じ経験をしている人もいるので。いろいろな人に発信していくことは大事ですね。

鈴木 お互いに補完し合い、力を借りることで新しい扉がさらに開いていくということですね。本日はありがとうございました。

写真/木村輝 文/日経doors編集部