チームのメンバーにも「伝えたつもり」
るり子店長 「そう。この前、リス子ちゃんにも伝え方について話したわよね。リス子ちゃんの場合は、後輩1人への伝え方だった。アリスちゃんはチームリーダーだから、特に伝え方を磨かなければだめなのよ。伝え方が悪いとチームのメンバーが各自違った解釈をして、ばらばらに動いてしまうからね」
アリス先輩 「私、リス子より、1から10までちゃんと伝えてますけど」
るり子店長 「あぁ、アリスちゃんもリス子ちゃんと同じ『伝えたつもり病』ね。処方箋を出すわね」
アリス先輩 「えぇー? 私が、リス子と同じ? それは、すごくショックです……。全員が一丸となってやっていきたいという思いで私、頑張ってきました! 全員が分かるように細かく説明していたのに」
るり子店長 「一生懸命さは分かるけど、チーム全員の解釈が同じになるように伝わっていないとだめよ」
アリス先輩 「一生懸命に気を使って、全員にちゃんと伝えてますよ。皆、分かったと言ってます! でも動いてくれないのは、なめてるに決まってます」
るり子店長 「なめられとんじゃなく、全部あんたの自分よがりの伝えたつもり。相手には伝わってないだけじゃ言うとろうね! みんなが悪いんじゃなく、あんたのスキルが悪いんよね!」
リス子 「出た~! 広島弁! るり子さん、落ち着いて。アリス先輩は今日初めてなので、許してください」
アリス先輩 「こ……怖いです」
るり子店長 「要するに、アリスちゃんが伝え方の工夫をすることが先決。1から10まで伝えても肝心なことを伝えていなければ無意味。しかもいちいち細かいことを伝えるから、相手は余計に考えなくなるわけよ。全部自分でまいている種!」
アリス先輩 「はぁ……」
最初に「どう動いてほしいか」を簡潔に伝える
るり子店長 「1から10まで言うのをやめることね。それじゃ、自分で考えて動くわけない。考えさせてあげようね」
アリス先輩 「考えさせるんですか?どうやって?」
るり子店長 「どうやったら、考えられる?」
アリス先輩 「え? ウ~ン……」
るり子店長 「と、質問すれば今、アリスちゃん考え始めたわよね」
アリス先輩 「あ! ……はい」
るり子店長 「これよこれ。1から10までいちいち言わずに、考えてもらうこと。でも、肝心なことははっきり言うこと。まずは、『どう動いてほしいか』を一言で言うこと」
アリス先輩 「どう動いてほしいか?」
るり子店長 「そう! 動いてほしいことをはっきり言わない『お察しくださいの人』が多いのよね。
例えば『暑いね~』『暑いね~』と連呼して、相手がエアコンをつけるのを期待しているようなもの。これだと『暑いですね』と共感を得るだけでエアコンをつけてもらえなくても不思議ではないのよ。『エアコンをつけて27度に設定して』と言えばいいの。どう動いてほしいかの部分を、最初に一言で伝える」
アリス先輩 「最初に、動いてほしいことか」
るり子店長 「そう、そして次に、それをするとどうなるのかを言ってあげること。多くの場合『言わなくても分かるよね』になって言わないのね。チームならなおさら、チームリーダーだけが分かっていて、メンバーは勝手な解釈で想像してしまうわけ。
例えば『結果として、職場の全員が仕事を快適にできるから』と言えば、あぁ、快適に仕事ができるために動くのかと分かるわね。そこを言わないと、エアコンをつけて22度に設定するかもしれないし、寒くて仕事どころではない人もでてくるでしょ。冷やせばいいってものじゃないから。でも、仕事を快適にするためだと考えていない人は、冷やせばいいやとがんがん冷やすかもしれない」
アリス先輩 「あぁ……そうですね。1から10までいちいち言ってたけど、それは言わなくても分かるだろうと思って言ってませんでした」
るり子店長 「そうでしょうね。そして、1から10というのが、エアコンはここ。このボタンを押して、ここを……ってな感じで言ってたでしょ」
アリス先輩 「はい! その通りです」
リス子 「うわ。るり子さん、現場のぞいてませんでしたか」
アリス先輩 「クルミもあげるから、これ食べて黙ってて!」