文句が出るのは成長したしるし?

るり子店長 「そう。だってね、やればできるってことは、やってくれているんでしょ。当初に比べたら、かなり、い~じゃない! 期待以上に動いてるわね!」

アリス先輩 「え~、全然よくないですよ!」

るり子店長 「あら、アリスちゃんも成長してるわね」

リス子 「え? 成長してるんですか、アリス先輩が?」

るり子店長 「そうよ。高い目標を設定してるってことね。現状で満足していないから、成長してるってこと」

アリス先輩 「さすが~、リスを見る目があるわね。るり子さんって」

るり子店長 「『これってやる意味あるんすか? 無駄じゃないすか?』というのは、効率よく仕事をしようとしているってことでしょ。『これじゃ無理です』とか『環境を改善してもらわないとできません』と意見を正直に言い始めたってことは、アリスちゃんに安心感を持つようになったのね」

アリス先輩 「そうなんですか? なめられてるのではなく?」

るり子店長 「なめとらん! 信頼できたけぇ、何でも安心して言えるんよね!」

リス子 「あ、広島弁! るり子さん、落ち着いてください。クルミのお代わり注文しますから」

るり子店長 「チームリーダーは、メンバーが安心して何でも話せるような関係性を作ることが大切よ。これがなかなかできずにみんな苦労してる。その点、アリスちゃんは立派。アリスちゃんのためにさらに頑張ってみるかぁってメンバーに思わせて、期待以上に動くチームになってほしいわね」

アリス先輩 「はい!」

褒めずに相手の気持ちをプラスにする「質問」

るり子店長 「アリスちゃんが、誰かに指示され、言われてもいないことまでやってあげたいと思うのはどういうとき?」

アリス先輩 「気分がいいときとか、大好きな人のとき。あるいは、お世話になってる人の場合かなぁ」

るり子店長 「そうよね。どれも、気持ちがプラスのとき、期待以上に動こうと思うわよね~」

アリス先輩 「確かに!」

るり子店長 「マイナスの気持ちにさせる相手より、いつも気持ちをプラスにしてくれる相手を次第に信頼していくでしょ~」

リス子 「はい、だからるり子さんを信頼してます~」

るり子店長 「ありがと。ヒマワリの種、おまけ!」

アリス先輩 「私も信頼してます~」

るり子店長 「ありがと! ほら、相手の気持ちをプラスにすることで、信頼を得ていくのよね」

アリス先輩 「相手の気持ちをプラスに? じゃ、褒めるっていうことですか? 私、苦手だなあ……思ってもいないことはあまり言えないんですよね」

るり子店長 「お世辞は不要。褒める必要全くなし。大事なのはね、『褒めること』ではなく、『褒められたと思われること』なのよ」

アリス先輩 「褒められたと思われる?」

るり子店長 「『褒める』は相手の軸ではなく、自分の軸で評価しているわけよね。それ、すごく嫌な感じじゃない?」

アリス先輩 「ええ、嫌ですね~。なんだか上から目線で、あなたから言われたくないわ、って言いそう」

るり子店長 「だから、相手の解釈が『褒められた』とならないと、褒めた側の自己満足に過ぎないの。『私ってこんなに人のこと褒めてる、いい人だわ~』という自慢」

アリス先輩 「そういう人いるいる、職場にも。で、それどうやって?」

るり子店長 「……うわぁ! アリスちゃん! どこの美容院に行ってるの?」

アリス先輩 「えっ? なんですか急に。……まぁ、えっと~青山のちょっと隠れ家的な……穴場のお店なんですけどね」

るり子店長 「……今、どんな気持ち?」

アリス先輩 「え? そんなに似合ってます? 髪形を褒められたから、なんか、うれしいです」

るり子店長 「別に……似合ってるとは言ってないし、今のは褒めてもいないの。でも、アリスちゃんは褒められたと解釈したんでしょ? これよ!」

アリス先輩 「え? 褒めたんじゃなかったんですか? 髪形を褒められたのかと思いました」

るり子店長 「そうでしょ。褒めてはいないけど褒められたと感じてもらう『質問』をしたのよ」