面白い話題を出さなくてはいけない?

 実例を見ていきましょう。デール・カーネギーの有名な著書『人を動かす』の中に、こんなエピソードがあります。

 カーネギーはあるパーティーで、有名な植物学者と知り合います。その植物学者が語るさまざまな植物の話にカーネギーはすっかり魅せられ、何時間も話を聞き続けました。別れぎわに植物学者はパーティーの主人に向かって、カーネギーは「世にも珍しい話し上手」だと褒めちぎったのですが、植物の知識がないカーネギーは心から面白いと思いながら聞いていただけで、実際はほとんど話してはいませんでした。

 カーネギーは単に相手が話す「スペース」をつくり、聞いていただけです。これがまず会話上手な人の重要な要素です。人は自分のことを話す機会があるとうれしいし、相手が自分に興味を示してくれるのがうれしいものです。そこでのポイントは、自分ではなく、相手が興味を持つテーマが何なのかを把握することです。自分から面白い話題を出さなくてはいけない、というプレッシャーは必要ないのです。

好奇心を持って質問する

 スティーブン・R・コヴィーの著書『7つの習慣』の中に、次の有名な言葉があります。Most people do not listen with the intent to understand; they listen with the intent to reply.(たいていの人は、理解しようとして聞いていない。返答をするために聞いている)。だから、相手の話の内容に耳を傾け、興味を持って質問する聞き手はとても歓迎されるのです。

 日本人の場合は、Most people listen to keep harmony(空気を読み、場の調和を乱さないために聞いている)という傾向があると思います。一般的に、日本人はあまり質問をしません(質問したら相手に失礼に当たるとか、話の腰を折ってしまうかもと考える伝統があるのかもしれません)。会話では相手が言っていることをよく聞いて、質問をしてもっと話してもらい、自分にも似た経験などがあればそれをシェアして共感するのもいいですね。

 ただし、自分の経験のほうが相手よりもずっとレベルが上だったり面白そうだったりする場合は、シェアするのは控えておきましょう。共感したくて話したのに、相手がしゅんとなってしまうことがありますから。

相手の興味は「オープン・クエスチョン」で把握

 では、どのような質問をすればいいのでしょうか。

 みなさんは「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」という言葉を聞かれたことがありますか? クローズド・クエスチョンはその答えが「Yes/No(はい/いいえ)」、または決まった内容(名前、職業など)になる質問。オープン・クエスチョンは、その答えを回答者が自由に考えて答える質問です。

相手がたくさん話しやすいオープン・クエスチョンを中心に、好奇心を持って聞きます

 相手に質問をするとき、お勧めなのは、相手がたくさん話しやすいオープン・クエスチョンです。でもこれは意外に難しいのです。

 もうかなり以前になりますが、私自身がコミュニケーションコーチのセッションを受けたとき、こうした話が出て、その先生がちょっと質問の練習をしましょうと言いました。その場で私がいろいろ考えて質問をしてみたのですが、なんとそのほとんどがクローズド・クエスチョンでした。例えば「今日は電車で来たのですか?」「和食はお好きですか?」など……。自分が普段、どれほどクローズド・クエスチョンで質問をしているか全然気づいていなかったので、本当にびっくりしました。

 相手の話すテーマに対して、知りたい! という気持ちを自ら引き出して質問すると、自然にオープン・クエスチョンになってきます。小さい子どもは何に対しても「どうして? なぜ?」と自然にオープン・クエスチョンをしますね。いろいろ知りたいという子どものような好奇心を持てるといいですね。

 例えば、何かのセミナーの場で同席した人と会話をするとします。
・「あの講師の話、面白いと思いましたか?」⇒ クローズド・クエスチョン
・「どの部分が特に面白いと思いましたか?」⇒ オープン・クエスチョン
・「お仕事は何をされているのですか? そのお仕事でどんなことが一番面白いですか?」⇒ クローズド・クエスチョン+オープン・クエスチョン

 いきなりオープン・クエスチョンで聞かれると戸惑うこともあるので、クローズド・クエスチョンでスタートしてからオープン・クエスチョンにしていけば、相手がどのような人で、何に興味を持っているのかが分かってきます。