物事を完璧にこなすことのコストは大きい

 みなさんは有名な「パレートの80-20の法則」について聞いたことがあるかもしれません。イタリアの経済学者、パレートはあるとき「イタリアの富の80%は、20%の人に属している」ことを発見しました。そこから、「80%の結果が20%のインプットや原因から来ている」ことがさまざまな場合に成り立つことを見出しました。

 つまり、全体のうちの20%を頑張れば80%の成果が得られる可能性があります。もし80%の成果では不十分で、100%の成果を得ようとすれば、頑張りも100%必要になります。つまり、100%の成果を得ようとするなら、80%の成果を得るのに比べて5倍も頑張らないといけないのです。「完璧」な結果を得るためのコストがあまりに大きいことに多くの人はなかなか気付きません。

 しかも「完璧な結果」は往々にしてtoo muchで、そこまでの価値がないことも多いのです。私が昔、通訳の勉強をしていたとき、テレビで活躍する同時通訳の仕事について、先生がこう言っていました。「同時通訳が、話者が言うことの100%すべてを通訳したら、とても聞きづらくなってしまいます。かと言って50%の内容では明らかに足りません。ちょうどよいのは70%から80%ぐらいです」。70~80%のパフォーマンスを目指すのが、効率の面でも実際の効果面でも、最適であると言えそうです。

完璧主義から抜け出すには「小さく始める」「時間を限る」

 あなたが「もしかしたら自分も完璧主義者の傾向がありそう」と思ったら、抜け出すための対処を今こそ、何か始めましょう。おすすめの方法は2つあります。

 まず、「小さく始めて続けること」です。例えば朝のルーティンを始めるなら、最初から「毎朝10km走る」と考えずに、10分間の散歩から始めてみてはどうでしょう。小さなことからとにかく始めてみて、もし無理だと思ったら、さらに小さく簡単なことに変えて再チャレンジします。

 もう1つは、「時間を決めてやってみること」です。私が最初にマッキンゼーに入社したときの仕事は翻訳と編集でした。そのころの私は完璧主義者で、できるだけ完璧な表現や言葉を見つけたいと頑張っていましたが、何しろ締め切りがあるので納得が行くまでの時間はかけられませんでした。もちろんベストは尽くすけれど、何よりも大事なのは時間内に仕事を完了することです。何かをやろうと思ったら、例えば15分や30分などタイマーをセットして取り組み、時間がきたら「自分はベストを尽くした。もう終わり」と切り上げます。これを継続してみるといいでしょう。