人は皆、組織やコミュニティーに所属すること、そしてその仲間に理解され、受け入れられることなどによって満たされる「帰属欲求」を持っています。大野さんは「悲劇のヒロイン(&ヒーロー)さんは、その欲求が満たされていないと考えられます」と話します。

 確実な居場所がなくなってしまうのが怖いから、悪口や愚痴に対して同意を求めることで、「共通敵」をつくることに必死になっているのです。

 「仕事面でチームに貢献できているのか自信がない」「過去に仲間はずれにされてしまった経験がある」……。原因は千差万別で、複数の事情が絡まり合っているのかもしれません。悲劇のヒロイン(&ヒーロー)さんも辛いのだとは思いますが、それを根本から解決してあげることは、「職場の同僚」というだけの立場のじょし子には、ちょっと荷が重過ぎます。

 「ここで注意したいのは『親身になって聞いていても、依存されるだけ』ということ。怖いのは、意見が食い違うことなどがあったとき。急に態度がひょう変し、『裏切られた!』と激しい反応が返ってきてしまうことがあります」(大野さん)

ストレスフリーに! 魔法のWord&Action

 あなたをモヤモヤから解き放つ「魔法のWord&Action」。今月は?

「(あなたは)大変だったんだね……」

 勢いに押されて「私もそう思う」と応じるのは絶対にNGです。「そうだよね? 仲間ならもっと聞いて!」という具合に、どんどん依存がエスカレートする恐れがあります。ポイントは、「主語を自分ではなく、相手にすること」。受け止めるだけで同調はしないスタンスで距離を置き、その場をやり過ごしましょう。

 「同じテンションで付き合ってもらえないと感じると、相手もだんだん距離を置いてくれるようになるはず」(大野さん)。相手のテリトリーには足を踏み入れず、「圏外の存在」であることをやんわりと伝え、適切な距離感を保てるといいですね。

漫画/とげとげ。 文/加藤藍子(日経doors編集部)

監修/大野萌子(おおの・もえこ)
日本メンタルアップ支援機構 代表理事
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー。企業内カウンセラーとしての現場経験を生かし、官公庁や大手企業、大学、医療機関などで年間150件以上の講演・研修を行う。著書に『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)他多数。公式HP