MBAの真骨頂、ケーススタディから何を学ぶか

 スペインは昼食の時間が午後1~2時からと遅く、同様に夕食も8~9時からが一般的です。しかもスペイン人は一日に7回食事をするのだそうです。同級生にスペイン人がほとんどいないので、あえて地元生活に合ったスケジュールにしているのかどうかは定かではありませんが、だいたい昼休み前はおなかが減って仕方なくなります。と言って昼食をのんびり学食で食べていると宿題などがたまる一方なので、私は学内のカフェテリアで調達したサンドイッチを片手に、宿題や予習などに充てていることが多いです。

 さて、必修の授業の中身はというと、経済学や会計から経営戦略、マーケティング、運営管理、クリエイティビティ、イノベーションまで、多岐にわたっています。ほぼ講義形式の授業もあれば、議論・討論が多いもの、チーム作業中心など、授業の形式もさまざまです。その中でも一般的に、ESADEに限らずMBAの授業の特徴の一つと言えるのが、ケーススタディだと思います。

 簡単に言うと、ある企業とその経営者を取り巻く環境や、直面する課題などを書いたおおむね10~20ページの文章(ケース)を事前に読んで分析し、与えられた問いについて授業で議論しながら、当該企業だけでなく一般的に当てはまるような戦略、考え方、知識などを学んでいく、というものです。

 例えば国際経営戦略の授業で、2008年当時の新日本製鉄のケースがありました。鉄鋼業界で世界的に買収が盛んになっていたこと、国内の需要拡大は見込みにくいこと、しかし自動車業界を中心とした顧客への安定供給が必須であること、さらには社会貢献の使命も自負していること、といった背景と併せ、宗岡正二社長(当時)が「同社の真の国際化が欠かせない」と考えていたことなどがケースで描かれていました。

 授業では例えば、なぜ宗岡氏は同社を国際化したいと思ったのか、そのためには、海外企業の買収や自社で進出するなど、どういった選択肢がいいのかについて議論しました。これをもとに、そもそも企業はなぜ国際化したいと考えるのか、国際化するにはどういった要素が必要か、などについて学びました。議論に正解はなく、実際にその後に当該企業が選択した戦略が正しい、というものでもありません。

 上記のケーススタディのように、ほとんどの授業は予習が必要で、さらにチームで課題を提出する、ということも頻繁にあります。と言ってもすべての授業に全力を注げるほど時間があるわけではないので、肩の力を抜きながら、優先順位を付けながら、それでも日々何かに追われながら生活しています。

 次に、私が最も冷や汗をかき、しかし最もためになったと思っている授業を紹介したいと思います。