ケースコンペティションは年中開催されている

 さて、MBAは授業以外にもさまざまな活動があります。その中でもMBAらしさを強く感じるのが「ケースコンペティション」です。日本語だとビジネスコンテストと言ったほうがイメージしやすいかもしれません。

 内容や形式は多岐にわたりますが、基本的には、まず自主的に3~5人程度のチームを組んで応募し、与えられたケースや課題、テーマに対して、事業プランを提案して競う、というものです。書類審査のみの一次選考があり、最終選考では選ばれたチームがプレゼンするという形が多いように思います。主催者は企業や団体などさまざまで、年中、どこかで催されています。

 ケースコンペは全く参加しない人もいれば、授業よりもやりがいを見いだしている人もいます。私はどちらかというと後者で、これまでに四つに参加しました。そのうち二つが最終選考に残り、一つは書類選考で落選、もう一つは応募したもののどうしても事業プランを提出できませんでした。締め切り直前に、自分たちのアイデアとほぼ同じ事業が、実際に現在進行中だと判明したためです。そこから代替案が出せずに悔しい思いをしました。

 私が最初に参加したのがESADE主催のC4Bi(Creativity for Business Innovation Challenge)というケースコンペでした。「世界一、予約が取れないレストラン」と言われた「El Bulli」(エル・ブジ)のオーナーシェフのフェラン・アドリアとESADEが共同でやっている、少し変わった部類のケースコンペです。

 アドリア氏は世界的な成功を収めながらも、2011年にお店を閉めてしまっており、一次選考では、El Bulliのケースを読み、彼がなぜ閉店を選択したのかなどについて分析するものでした。フィリピン人のミシェル、ブラジル人のカミラと3人で応募し、幸運にも最終選考に進むことができました。

 C4Biのケースコンペティションでの一枚です。El Bulliのフェラン・アドリア氏(写真中央)を囲んだチーム写真です。マサチューセッツ工科大学のビジネススクールから来た3人と、ESADEの3人。こうなったらいつか、アドリア氏のレストランに食べに行かないと、と思っています。レストランの再開が楽しみです

 このケースコンペの目的は、アドリア氏が考案した「クリエイティビティ・オーディット」というツールを使い、企業がクリエイティビティをどう管理し、生かしているかを分析するものだと理解しています。

 アドリア氏ほどの天才的なシェフですら、常に革新的な料理を生み出し続けるのは難しいといえます。一般の企業においては、例えば、革新的な製品を生み出すことを促すような文化や土壌、チーム、人材などが必要で、それらがどの程度、整備されているかを測る、といったようなことだと思います。

 最終選考ではFCバルセロナが2016年に立ち上げた「バルサ・イノベーション・ハブ(BLHub)」という組織を対象に、このツールを使って分析をし、それらを踏まえBLHubに今後の事業プランを提案するというものでした。

 最終選考はESADE4チームと海外から選考に通った4チームがペアを組むことになり、私たちはマサチューセッツ工科大学のビジネススクールから来た3人とペアになりました。日程は3日がかりです。初日はアドリア氏やBLHubに話を聞き、さらにFCバルセロナの本拠地「カンプ・ノウ」見学というおまけもついていました。2日目は丸一日、プレゼンの準備、そして最終日に発表という流れでした。結果的に優勝することはできなかったのですが、この短い説明だけではとても言い尽くせないほどいい経験になりました。

 C4BiはESADEが主催していること、また9月に入学してまだ間もない時期に告知されたといった理由もあり、ESADEからたくさんの学生が応募しました。まさか最終選考に残れるとは思っていなかったので正直、驚きました。
あとがき
 先日、インド人の同級生に招待してもらい自宅にお邪魔する機会がありました。彼がインド料理を作ってくれるというので、私は「じゃあ日本食で……」ということで、日本食と言っていいのかよく分かりませんが、生まれて初めてカリフォルニア・ロールを作りました。日本食の中でお寿司が有名なのは承知ですが、一般的には自宅で作るものではない、というのを知っている海外の人はあまり多くないような気がします。子どもがいるので、日本でも巻き寿司の類いはたまには作っていましたが。ついでと思い、握り寿司もエビだけで少し作り、唐揚げも付けました。
 スペイン料理は赤やオレンジの色をしたものを多く見かけますが、食べてみると見た目ほど辛くありません。というか、全く辛くありません。単純にパプリカの色です。私は辛い物がそれなりに好きなので、「辛そう!」と思って食べてがっかりする、ということが最初の頃はよくありました。たいていのスーパーでメキシコのサルサソースを売っているのですが、辛さはマイルドが主流です。子どもでも食べられる程度の辛さです。
 ということで、その友人が作ってくれたインド料理は久々にかなりスパイシーでおいしかったです。でも彼に言わせるとインド料理の水準からするとマイルドだそうです。スペイン料理はとてもおいしいですが、辛さだけはやはり物足りないと改めて感じました。さらにもう一つ付け加えるなら、パクチーがないこともですが。

文/竹本恵