あとがき
 今回は、ESADEのクラブの一つ「Women in Business Club」の代表として活躍している台湾人留学生、エミリーを紹介したいと思います。彼女は私とクラスが違うこともあり、頻繁に会うというわけではなく、また、これまで一緒に課題などに取り組んだこともありませんでした。が、なんというか、彼女には美しさと力強さを併せ持ったオーラがあって、会うたびにいつも「私ももうちょっと頑張ろうかな」という気にさせてくれる、とても格好いい女性です。ちなみに台湾からの留学生は同学年で、エミリー一人です。
 エミリーは台湾の電子機器メーカーで法人営業を約7年経験した後に、ESADEにやってきました。パソコンやパソコンの部品を作っている会社です。エストニアやデンマーク、ハンガリーなどヨーロッパを中心とした地域での勤務経験が豊富で、現地での販売網の構築やマーケティングなどの業務を担当してきました。仕事でよい成果を上げることができていた一方「もっと、世界を良い方向に変えるようなインパクトがある仕事がしたい」という強い思いを抱えていたそうです。そして「そのためにはMBAの学位やビジネスマネジメントの知識が必須だ」と考え、彼女はキャリアを中断する決意をしました。
 当初は卒業後の進路で具体的なことは考えていなかったようですが、「やはりテクノロジーには世界を変える力がある」と思いテック系の企業への転職を希望しています。
 「例えばGoogleの技術があれば、例えば南米ボリビアの小さな町にいても情報にアクセスができ、かつ世界中の人がその町について知ることができます。例えばその町を宣伝をしたり観光ツアーを作ったりして、町やそこに住む人々の発展の手助けをすることもできるでしょう」。こういったビジネスに彼女はとても興味があるそうです。エミリーにとって仕事は「ギブアンドテイク」。自分の知識や経験を生かして人の役に立ちたいという一方で、仕事を通じて自分自身も成長させたい、という考えが根本にあります。
 あっという間に必修期間が終わろうとしているMBAですが、「自分が想像していた以上のものを得られている」とエミリーは感じています。これまでも全く異なる文化圏でさまざまな国籍の人たちと一緒に仕事をしてきた経験から、「国際的な環境」という意味ではさほど期待していなかったそうです。ただ、「背景も考え方も価値観も問題の解決方法も、MBAに来た目的も人生の目的も違うクラスメートと交流し、彼らを知り彼らから学ぶことがとても刺激になっている」と話してくれました。
 必修期間の最後、6月には「マスタープロジェクト」という2週間にわたる課題があります。クラスは関係なく自主的に4人のチームを作って取り組むのですが、この最後の最後の機会でエミリーと同じチームで学べることになりました。どんなチームワークを発揮できるか、今からとても楽しみです。

文・写真/竹本恵