「私は何者でもない」と認めたら楽になった

 自分は何者でもないことを認定して、自分への過度な期待を手放してさえしまえば、そこからは話が早かったです。謎のプライドが邪魔をしていただけで、もともとは努力家で職人気質な性格。やると決めたらやれる子なんです。

 営業職の次に経験した広報とライターの仕事は、それぞれ休日に勉強をして、自発的に切り開いたキャリア。もちろん周囲が引っ張ってくれたからではあるのですが、「種まきをすれば、何かが変わる」という成功体験を得ることができました。“根拠のない自信”に近い自己肯定感ではなく、本当の自己肯定感が育っていったような気がします。

 だから、アメリカ取材で玉砕して、英語をもう一度頑張ってみることは、私にとって因縁の対決だったのです。スネていた自分を思い出すようで、実は英語が聞こえないという事実を直視することは簡単ではなかったけど。

 でもやっぱり、英語が、言葉が好きなんだよな。今だから思えるのかもしれないけど、そもそも語学って競うものじゃない。それに、頑張るようになって気付いたこともあります。彼ら帰国子女たちは、私より努力する年齢が早かっただけなんだなと。きっと幼い頃に異国の地でつらい思いをたくさんしたから、今の彼らがある。高校までに海外経験がなくたって、大人になってから自分で環境をつくればいいんです。

 「嫉妬」を「目標」に変える勇気が、私には必要だったんだな。

 英語でもなんでも、勉強をすると世の中の見え方が変わります。なんでもなかった風景や出来事が、急に面白くなる。20代滑り込みでそれに気付けた私はラッキーなのかもしれません。「根拠のない自信」もいいけれど、勉強や経験から得られる「根拠のある自信」をつけていく30代にしたいな。

 次回から、「ユニバーサルやなあ~」と思う人たちに直撃して得た学びをしたためていきます。既にお二人のインタビューを終えていますが、皆さんとてもファビュラスです。どうぞお楽しみに!

文/ニシブマリエ