日本で抱っこひも姿のお母さんが多いワケ

周子 それは帰国するたびに感じます。日本では、抱っこひも姿のお母さんが多いですよね。スペース的にバギーを使うと邪魔になっちゃうことを心配しているんだと思いますけど、もう一人で歩ける子をずっと抱っこしていたり、夏の暑い日にずっと抱っこしていたり、すんごい大変そうだなと思いますね。

マリエ ロンドンではバギーで地下鉄に乗るんですか? ロンドンのチューブ(地下鉄)って、結構狭いですよね。

周子 乗りますね。バギーがいたらみんな場所を空けてくれるので。ロンドンのエスカレーターはバギーでも乗りやすいですし。

マリエ 日本だとバギーでエスカレーターには乗っちゃダメなんですよね?

周子 こないだ、しびれを切らして日本でもエスカレーターに乗りました(笑)。だって、エレベーターがいつまでたっても見つからないんですよ。駅の周辺を何度もぐるぐるして、それでも見つからなかったから。

マリエ 「エレベーター見つからない問題」ってバギーだけじゃなくて、車イスユーザーにとっても不便ですよね。地上だと駅員さん呼べないし。

周子 とにかく日本は他人の目を気にしなきゃいけないのがしんどい。子どもを黙らせるのが親の務めだって空気感があるけど、子どもは泣くものですからね。リサーチのためにも日本に来たらいろんなレストランに行きたいのに、「お子様はご遠慮いただいています」と書かれていることもままあるので、すごく残念。

マリエ いろんなレストランに断られた結果、皆さんファミレスに避難してくるんですかね。

周子 日本のファミレスは優秀ですからね。子どもを産んでからファミレスのありがたみが身に染みました。あと、日本は公共の場で母乳をあげるのもNGですよね。

マリエ ロンドンは人前で母乳をあげても全然オッケー?

周子 全然オッケー。授乳ケープをしている人もいますけど、隠さず堂々と授乳している人もそこらじゅうにいますよ。

マリエ へえ、オープンなんですね。逆に日本のほうが優れてることってありますか?

周子 ものすごくキレイな授乳室があること。海外の人は日本の授乳室を見て驚くんですって。母乳をあげている間、安心できるような内装にBGMまで流れていて。

マリエ そっか、ロンドンって授乳室なんてないんですね。

周子 ないです、ないです。日本のデパートに子ども用の休憩室や遊び場があるのも、親切だなって思いますね。ただ、充実しているのはまだ女性向けだけだったりもする。最近はお父さんが入れる授乳室もあるみたいですけど、おむつの交換台だって女性トイレにしかないことも多い。パパが育児を当たり前にする時代なので、男性向けの設備がもっと必要ですよね。

マリエの気付き
「お母さんになっても、同じ場所でランチやショッピングをしたい」と周子さんは言います。これは「わたし」のまま母になるということかなと解釈しました。私のイメージでは、日本では「お母さん」になることがより求められる。「わたしとしての自分」より「お母さんとしての自分」が求められる。私は普段からステレオタイプについてよく考えるのですが、「母親」というステレオタイプは(私の周りでは)あまり語られません。周子さん、新たなテーマをありがとうございます。