消えていく備品。異文化圏での起業は大変だ!

ニシブマリエ(以下、マリエ) 美緒さん、ルワンダにはいつから?

山田美緒(以下、美緒) 2016年の8月からです。こっちに来てから既に3年がたちました。

マリエ そもそもどうしてルワンダに?

美緒 夫がルワンダで起業することになったので、だったら私もルワンダで何かしたいと思って、KISEKIを立ち上げました。学生の頃からアフリカに関心があって、スワヒリ語を専攻していたので。

マリエ ルワンダにもスワヒリ語話者はいますもんね。シングルマザーを中心に雇うというのは、当初からの構想なんですか?

美緒 それが、全然。今ではカジュアルな和食レストランですが、初めは超高級レストランだったんですよ。日本から寿司職人を連れてきて、その道20年の板前さんがカウンターに立って寿司を握っていたんです。内陸国のルワンダでは魚が取れないので、ベルギーから魚を空輸して。お酒や調味料も日本から冷蔵コンテナで輸入していました。

マリエ すごい! どうして方向転換したんですか?

美緒 高級レストランの需要がなくて、収支が合わなくなったんです。

マリエ でもここ(KISEKIが位置する街、キミハーウラ)は、高級住宅街ですよね?

美緒 そうですね。駐在員も多いのである程度は回っていたんですけど、それ以上に出ていくお金も多かったんです。

マリエ 確かに、輸送費も人件費も高くつきそう。

美緒 ハイクラス向けなので、シェフもウエイターもマネジャーもトップクラスを雇っていたんです。それなりに高い給料を払っているのに毎月「もっと上げろ」って交渉されるんですよね。

マリエ ルワンダの人は、主張がはっきりしている人が多そうですもんね。

美緒 それだけならいいんですけど、国民性なのか、見ていないとすぐサボろうとするし、備品もどんどんなくなっていくんですよね。50個ずつ仕入れたシャンパングラスとウイスキーグラスは、数カ月でなくなりました。スタッフがお店のものを盗みまくるんですよ。こっちが気づいていないと思っているのか、1日数個ずつ消えていくんですよね。

マリエ え、やば。それって国民性なんですか?

美緒 お店の備品が盗まれるのは、シングルマザーを雇っている今でも変わらないので、罪の感覚が薄いんでしょうね。現場を押さえて注意しても「借りるだけ」とごまかすし。「持っている人はシェアすべき」という文化があるんですよ。

マリエ 常識の違う異文化の土地で起業するって、口で言うほど簡単じゃないですね……。

ユニフォームは「キテンゲ」と呼ばれるアフリカンファブリックでできている
ユニフォームは「キテンゲ」と呼ばれるアフリカンファブリックでできている