中絶禁止にシングルマザー。本当に「男女平等」?

マリエ そもそも、どうしてこんなにシングルマザーが多いんでしょう? 美緒さんとお会いする前に訪れた農村部でも、無職のシングルマザーにたくさん出くわしました。

美緒 やっぱり無計画な若年妊娠が原因ですね。うちで働くママたちの場合は、16歳とか18歳のときに産んでいて、法律婚ができるのは21歳からなので。

マリエ 学校に通いながら産むんですか?

美緒 そういう人もいるけど、多くは妊娠を機にドロップアウトしますね。彼女たちの親世代にも「女の子だから無理して勉強しなくていい」という考え方の人はいまだに多いし。15人いるKISEKIのママたちの中で、英語を話せるのは2人ですね。学歴がないから、職も得られない。

マリエ 女性だけで子どもはできないじゃないですか。精子の主たちは何をしているんですか?

美緒 うちのママたちの相手の男性は、だいたい逃げてますね。父親から養育費をもらってる人は一人もいないかな。こうした状況を政府も問題視はしていて、男性に養育費を払わせるよう促してはいるんですけど全然ですね。父親が逃げるから、ママたちはお母さんや姉妹で一緒に住んでて、みんなで支え合って暮らしてます。父親側が引き取っているケースはほとんど見たことがないです。

マリエ ただのクズじゃないですか。しかもルワンダって、中絶が法律で禁止されてますよね? それで「男女平等」をうたっているのにはすごい矛盾を感じる……。ママたちは中絶禁止に対してどう思っているんだろう。

美緒 私の周囲にいるママたちは、特に疑問を持っていないですね(笑)。子どもはできたら産むのが当たり前だから。中絶は禁止されているんだけど、最近は多少緩和され始めていて。薬局で「自然流産」に近い形で中絶できる薬が500円くらいで売っているし、お隣のウガンダに行って中絶する子もいる。中絶という選択肢がある人とない人の間には、大きな情報格差があるんです。

マリエ そもそも、コンドームの存在は知っているのかしら。

美緒 コンドームは売っているし、コミュニティで配ってもいるんですよ。でも使い方を知らない子もいて。こないだは「射精する寸前に取るもの」だと思っている子に会いました。

マリエ ヤバすぎる。

美緒 すごくないですか? どんな教えられ方してんねんって。

マリエ コンドームを使ったことがなくても、用途くらいは分かるだろって思っちゃいますけどね。ああ、でもそれって、精子と卵子が結合して子どもができるっていう前提の理論を知っているからそう思うのかも。性に関する知識が全くなければ、コンドームの必要性も分からないかもしれないですね。

「もっと雇用を生み出したい」と山田美緒さん
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