貧乏だけど、貧困じゃない

美緒 あとは単純に、想像力を働かせることが苦手かなと感じますね。妊娠のその後をイメージできない。子どもを育てるのにどれくらいお金がかかる、とかね。何せ今を生きている人たちだから。妊娠だけじゃなく、貯蓄という概念もない。15人中、銀行口座を持って貯金しているは1人だけです。

マリエ もしかして、将来の夢とかいう概念もない? 農村部で女の子たちに将来の夢を聞いたら、きょとんとされました。

美緒 あるにはあるんですけど、「お店を持ちたい」とかで選択肢は限られてますよね。ロールモデルが少ないので、世の中にどんな職があるのかも知らない子がほとんど。ルワンダでしっかり教育を受けてきた人たちは、男女かかわらずしっかりした職に就くし、夢も語るでしょうね。でもそうじゃない人たちは、目の前のことしか見てないです。しかも未来を心配もしていない。

マリエ ハクナ・マタタ(スワヒリ語で「どうにかなるさ」の意味)ですね。本当に、どの家に生まれるかで全然違いますよね。日本だって格差社会だって言われるけど、生活保護みたいな社会保障は整備されているし、識字率はほとんど100%。でもルワンダは貧困層が、深刻な貧困ですよね。

美緒 貧乏な家にはトイレもないですからね。バケツに用を足して、庭にまく。

マリエ 庭にまかないで……。でも、彼女たちの明るさはどこから来るんでしょうね。

美緒 彼女たちは「貧乏」だけど、「貧困」じゃないんですよ。

マリエ 貧乏と貧困、違いは?

美緒 困っているか、困っていないかですね。確かにお金はないけど、孤立はしていないんです。家族や地域との結びつきが強いから、お金がなくてもごはんは毎日食べられるし、シングルマザーでも地域のみんなで育児をする。自分で育てられない場合でも、子どもを孤児院に送り込むんじゃなく、他の家族や親戚が引き取ります。こうした助け合いの文化があるから、お金がなくても幸せそうですよ。

マリエ なんだか、グッときました。東京に暮らす私のほうがよっぽど孤立してるかもしれない。

美緒 日本みたいに、孤立した親が子どもを虐待するとか、ストレスを抱え込んで自殺したりとかは全然ないですね。ルワンダにも性格の悪い奴はたくさんいますよ。でも周囲がいじめたり、孤立させたりするかというとそうじゃない。文句を言いながらも、ちゃんと助けてるんですよね。助け合いの文化が、幸福感につながっているんだと思います。

取材後、マリエのモノローグ
ルワンダは格差が大きい国だけど、「かぞく」の概念は日本より多様でした。今回取材させていただいたKISEKIで働くシングルマザーの皆さんは「妊娠したら男に逃げられた」方が多数でしたが、自分の意志でシングルでいることを選んだり、籍は入れていないけど事実婚だったりという人たちも。だから異母きょうだい・異父きょうだいは当たり前だし、恋人に連れ子がいることもよくあることなのだそう。

美緒さんが口にした「貧乏でも、孤立していないから不幸じゃない」との言葉は、まさに今の日本に必要なことだと思いました。家族みんなで、地域みんなで子を育てる文化が日本にもあれば、20代・30代女性が抱えている「子育ては大変そう」「この薄給で子を育てられるのか」といった漠然とした不安も解消されるのに。

取材・文・写真/ニシブマリエ