第二新卒・20代の転職 ありがちな「カン違い」

 転職エージェントに相談に訪れる第二新卒には、ある「カン違い」が見られるといいます。

 「新卒の就活の時と同様、世の中の会社すべての門戸が開いている、と思っている人が意外と多い」と沖野さん。近年、第二新卒の採用枠を設ける企業は増えていますが……。

 「すべての会社が門戸を開いているわけではありません。例えば就活で人気が高い消費財メーカーなどは、中途採用は経験者が対象である場合が多いです。そういった業界で目指す企業がある場合、もう少し経験を積んで経験者として転職を狙うほうがいいでしょう。何らかの業務スキルを身に付ければ、それを武器に異業界へ転職できるチャンスもあります」(沖野さん)

 茨木さんは「短期目線で判断しないこと」とアドバイスを送ります。

 実績を挙げているのに給与に反映されない、昇格しない、評価されていないという不満があると、転職を考える人もいるでしょう。ですが、「私は評価されていない」というのはカン違いである可能性もあります。

 「企業側は社員のキャリアを長期的視点で考えています。例えば成長機会(チャレンジの場)を提供してくれたとしたら、それは期待の表れかと思います。給与やポジションは後からついてくるもの。せっかく実績を積んでいるなら、もう少し粘ってみてもいい。転職すればそこまでの実績もゼロリセットされてしまい、目標のレベルに到達するまで遠回りすることになりかねません」(茨木さん)

採用担当者は、20代のどこに注目している?

 これまでお伝えした通り、第二新卒を歓迎する企業は多数。では、企業は第二新卒の選考の際、どんなポイントに注目しているのでしょうか。

 「1~2年で身に付けたビジネススキルをアピールしなければと考える人は多いですが、第二新卒のビジネス経験はそれほど問われません。むしろ、企業は人柄や考え方を重視します」と沖野さん。

 では、どのようにしてアピールポイントを挙げればよいでしょうか。「例えば、上司・先輩・取引先の人などから褒められたこと、感謝されたことがあれば、『なぜ褒められたのか』『なぜそれをしようと考えたのか』と、一歩掘り下げてみる。『自分はどこが人と違ったのか』を考えてみると、自分のアピールポイントが見えてきます。『明るい対応』や『気配り』といったことでも十分です」(沖野さん)

20代の転職は「人柄や考え方をどう伝えられるか」がポイント
20代の転職は「人柄や考え方をどう伝えられるか」がポイント

 つまり、「こんなスキルを磨きました」とアピールするより、「こんな思いで取り組み、こんな考えに至りました」と伝えるほうが何倍も説得力があるといいます。「入社1~2年で辞める自分を客観的に振り返り、新卒時と比べて自分がどう成長したかを語れるようにしましょう」(沖野さん)

 茨木さんも人柄や考え方について言及します。「20代後半の人材ともなれば、企業は採用したら会社にどんなメリットがあるかを見ています。自分の経験やスキルと、相手企業が求めているものの接点を探り、自分がどう貢献できるかの仮説を立てて面接で伝えましょう。仮説が間違っていたとしても、自分の考えや言葉で伝える姿勢を企業は評価します」

 「現状」だけでなく「先々の可能性」、「他者の価値観」ではなく「自分の価値観」、そこに目を向けてみることで、転職すべきか否か適切な判断ができるのです。

取材・文/青木典子 写真/PIXTA

藤井薫
『リクナビNEXT』編集長
藤井薫 1988年リクルート入社。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長を歴任。2008年からリクルート経営コンピタンス研究所、14年からリクルートワークス研究所兼務。「変わる労働市場」「変わる個人と企業の関係」「変わる個人のキャリアについて」講演・メディアで発信中。近著『働く喜び未来のかたち』(言視舎)。
沖野沙代子
リクルートキャリア
沖野沙代子 営業職として業務アウトソーシング提案などを経験後、リクルートキャリア社へ入社。入社以降は、一貫して、営業職の転職支援に従事。キャリアアドバイザーを経て、現在は20代前半をメインとする若手求職者のキャリアアドバイザーチームのスーパーバイザーを務めている。
茨木涼子
リクルートキャリア
茨木涼子 独立系SI企業に入社し通信キャリア、大手SIer、大手インターネット企業向けの営業、人材支援を5年経験しリクルートキャリア社へ入社。入社以降は一貫して、IT・デジタル(インターネット)領域の経験を持つ人の担当コンサルタントを務めている。