「30代で異業種転向は無理」は昔の話

 まず「キャリアを活かしたい、伸ばしたい」と希望するケース。30代にもなると即戦力性が求められるため、転職先の選択肢は「同業界・同職種」に限られると思われがちですが、状況は変わっています。昨今、異業界への転職事例も増えているそうです。

 時代の変化に応じて、企業は事業変革を迫られています。異分野に進出して新規事業を立ち上げる取り組みも活発になり、老舗メーカーなどではモノを作って売るだけでは限界があるため「コト消費」やサービスの充実を図ろうとしています。このように新しい価値を生み出そうとすると、自社にいる人材だけではできません。

 「そこで異業界からベテラン層を迎えて、事業推進を任せたいとする採用が増えているのです。実際、広告代理店で営業をしていた30代半ばの女性が大手メーカーのブランド戦略の企画職に転職した例や、同じく30代半ばの女性が金融業界の営業企画から大手流通企業のベンダーマネジメント職に転職した例などがあります。数値分析力、交渉力、課題解決力、企画提案力、調整力など、汎用的なビジネススキルが評価され、異業界へキャリアチェンジを果たす30代女性もいらっしゃいます」(永棹さん)

転職歴の「あり・なし」、採用で有利なのはどちら?

 なお、30代ともなると既に何度か転職を経験した方も多いことでしょう。

 「転職回数が多いと不利」と思っている方も少なくありませんが、永棹さんによると「むしろ30代後半以降で転職歴がない人のほうが企業に敬遠されることもある」のだとか。

 10数年以上も同じ会社で働き続けている人は、その会社のやり方や風土に染まってしまっている可能性があるため、新しいやり方や環境になじめないのでは、と不安視される場合も。特に大手企業に長くいた人の場合、細分化された業務の一部しか担当してこなかった人が多い傾向があります。一人が幅広い役割をこなすことが求められる中小ベンチャーなどでは、「これしかできない」「これしかやらない」という姿勢が身に付いていると評価は厳しいものとなるといいます。

 「一方、何度か転職された方はさまざまな会社の手法やケースを経験しているので、視野が広く柔軟性があると期待されることも多いのです。ですから、採用選考に臨む際にはその点をアピールするといいでしょう」(永棹さん)