働き方が大きく変わった今、将来に大きな不安を抱えてしまっている人もいるのではないでしょうか。そこで今回、「プロティアン・キャリア」の識者であり、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔さんと、名だたる企業でキャリアを積まれてきたエール取締役の篠田真貴子さんの2人から、迷える働く女性にエールを贈ります。

<b>篠田真貴子(しのだ・まきこ)さん</b><br> エール株式会社 取締役<br> 慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月にほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社、取締役CFOを務める。2018年11月に退任し、1年3カ月のジョブレス期間を経て、2020年3月から現職。
篠田真貴子(しのだ・まきこ)さん
エール株式会社 取締役
慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月にほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社、取締役CFOを務める。2018年11月に退任し、1年3カ月のジョブレス期間を経て、2020年3月から現職。
<b>田中研之輔(たなか・けんのすけ)さん</b><br> 法政大学キャリアデザイン学部教授<br>一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事<br> 一橋大学大学院博士課程修了後、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD:東京大学)などを務める。専門はキャリア論。企業顧問24社歴任。著書25冊。『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP)など。
田中研之輔(たなか・けんのすけ)さん
法政大学キャリアデザイン学部教授
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
一橋大学大学院博士課程修了後、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD:東京大学)などを務める。専門はキャリア論。企業顧問24社歴任。著書25冊。『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP)など。

自分のキャリアを1つの組織に預けきることのリスクに気付こう

──コロナ禍により、加速度的に働き方改革が進み、先が見えない不安が積み重なった厳しい状況をどう捉えるべきでしょうか。

田中研之輔さん(以後、田中) これまでの当たり前が通用しないことを昨年1年間で感じて、これまで働いてきた自分の支えが通用しない、すごく不安な状況だと思います。20代30代でキャリアデザインをしたいけれど、難しいという声もよく聞きます。僕の中では、この3年はキャリアトランスフォーメーションの時期と位置づけています。

篠田真貴子さん(以後、篠田) どんな立場の人にも働き方に変化があったと思います。中でも期間雇用や派遣社員の人たちは、働く機会そのものを奪われ、キャリアが続かないことを実感したのではないでしょうか。長く働くためにはどうしたらいいのかを考え、チャンスを貪欲に取りに行く、積極的になるマインドチェンジが起きたのであれば、コロナはいい機会になったといえるのかなと思います。

田中 著書の『プロティアン』の中で書いたのが、組織内キャリアからのライフシフト。キャリアを1つの組織に預けきることのリスクに気付き、オーナーシップを持って主体的にキャリア形成しようということです。

篠田 こういう話をすると、「私には無理」と感じる人もいるかもしれません。でも、その人が頼られる理由はスキル以外にもあって、培ってきた関係性や環境の中で育まれています。「何か資格を取らなくては」と思わなくても、そうじゃないところにチャンスがあるものです。

田中 そのとおりですね。僕は「人生で没頭した時間の長いものを3つ書き出してみて」とよく言います。「ダンスをやっていました」とか「ファッションが好き」など、皆さんいろいろ持っていて、実はそれが「キャリア資本」になる。副業が認められ、組織の中だけで仕事をするのではなく、自分で仕事を作り出せる。子育て中の女性がオンラインで30名以上を集めて料理教室をやっているという話を聞いたりもします。