「自分の見せ方」に悩んでいるdoors世代の読者は多いでしょう。大手広告制作会社勤務後、2児の育児期間を経て「セルフプロモーションプランナー」へと転身した一力万希子さん。元・広告プランナーの視点を生かし、ターゲットやシーンごとに魅せ方を変えてその人らしいスタイルをプランニングするプログラムを提供しています。一力さんに、セルフプロモーションのコツをお聞きしました。

一力 万希子(いちりき まきこ)さん。<br>セルフプロモーションプランナー/ACIC 国際イメージコンサルタント協会メンバー。<br>1980年、東京生まれ。大手広告制作会社勤務、結婚、夫の海外赴任、出産、離婚を経験。2人の息子を持つシングルマザー。2017年、ichiriki planningを設立し、独自の「セルフプロモーションプログラム」にもとづいたコンサルティングサービスを提供。大学在籍時、「ミス明治学院」に選ばれる
一力 万希子(いちりき まきこ)さん。
セルフプロモーションプランナー/ACIC 国際イメージコンサルタント協会メンバー。
1980年、東京生まれ。大手広告制作会社勤務、結婚、夫の海外赴任、出産、離婚を経験。2人の息子を持つシングルマザー。2017年、ichiriki planningを設立し、独自の「セルフプロモーションプログラム」にもとづいたコンサルティングサービスを提供。大学在籍時、「ミス明治学院」に選ばれる

自分らしく働くために、「セルフプロモーション」のスキルを身につける

 「セルフプロモーション」の意義を一力さんはこう語ります。

「日本には、控えめであることを美徳とし、協調性を重んじる文化があります。そのため、自己主張するのは恥ずかしいことだと思われてきました。ビジネスにおいても『見た目よりも取り組み姿勢が重要』という価値観がありました。けれど、時代は変わっています。今は企業内で働く人にも個性が求められる時代。『××社の○○さん』ではなく『○○さん』に仕事がオファーされる、そんな『個人商店』を持つような感覚で仕事をするようになっています。さらには、「副業」を解禁する企業が増え、複業・起業もしやすい環境が整ってきました。

これからは、より『個』の顔でビジネスをするスタイルが定着していくでしょう。そして『個』を発信する場はSNSが中心となり、そこではビジュアルでの訴求力も必要です。そんな時代に自分らしさを生かして働くためには、セルフプロモーションが重要。皆さんにそのスキルを身につけていただきたいと思うのです」

「自分の代わりはいくらでもいる」――病気による挫折が転機に

 一力さんが自らの「セルフプロモーション」を初めて意識したのは大学2年のときでした。ミスキャンパスコンテストに友人が冗談で一力さんをエントリー。もともと活発なタイプで、可愛らしさや華やかさは自分にはないと自覚していましたが、「出るからには中途半端に終わりたくない」と、自己演出方法を画策しました。「当日、会場にいるのはどんな人たちか」をイメージし、「親近感があり、一緒にいて楽しい人」に演出方針を決定。ステージでコーラの一気飲みを披露して、会場を盛り上げました。そんな「戦略」により、見事ミスキャンパスの座を勝ち取ったのです。

 大学卒業後は大手広告制作会社に入社。仕事に情熱を燃やし、連日深夜まで働く日々を過ごしました。しかし、27歳のとき、大きな転機が訪れます。大型プロジェクトのメンバーに選ばれ、「キャリアを飛躍させるチャンスをつかんだ!」と心躍らせた矢先、子宮頸がんが発覚。休職・療養を余儀なくされたのです。

「挫折感を味わいました。プロジェクトには私の代わりに後輩がアサインされ、活躍している。『どれだけ一生懸命やっても、自分の代わりはいくらでもいるんだな』と、初めて気付きました。仕事で自信を失い、婦人病を患ったことで女性としての自身も失い……そこで、自分の生き方を『棚卸し』したんです。自分はどう働きたいか、将来どうなりたいのか。そうして、『人に喜ばれ感謝される仕事、人を幸せにする仕事をする』という目標にたどり着いたんです」

 母がヨーロッパのインテリア、ファブリック、刺繍などを扱う仕事をしていた影響で、もともと「美」への興味が強かったという一力さん。結婚、夫の海外赴任、2人の子の出産・育児と、目まぐるしい変化の中で「イメージコンサルタント」のディプロマを取得。友人・知人へのカラーコンサルティングから活動をスタートしました。単にメイクやファッションを提案するだけでなく、自分自身が以前に行ったような「生き方の棚卸し」もサポートできるようにと、心理学も学びました。

 ある日のこと、以前にコンサルティングを行い、見た目を変化させたクライアントさんにばったりと遭遇。その人がコンサルティング前の姿に戻ってしまっているのを見てショックを受けたといいます。

「プロの手で一時的に変身するだけではダメ。自分自身でコントロールしながら継続できるようにしなければ、と思いました。そこで、その人が目指す姿に応じたコンセプトのご提案とその後のサポートをするサービスを提供することにしたんです。私には広告業界で培った『プロモーション』の視点とノウハウがある、それを生かそう、と」

 こうして一力さんは、「審美眼」×「広告プロモーション」×「心理学」の観点でセルフプロモーションを支援する「セルフプロモーションプランナー」として起業を果たしたのです。