最近は、メディアを通じてがんの検診や早期発見の重要性について目にする機会も多く、関心の高い女性は多いだろう。ただ、doors世代にとって、正しい知識は何なのか不安になることも事実。そんな疑問について、がん検診の最前線を長年経験してきた医師に聞いてみました。

doors世代に乳がん検診は必要なのか?

 doors世代が感じているがんに対する疑問や質問を代表してくれたのは、日経doorsのアンバサダーで和スイーツ研究家の安原伶香さん。また、doors世代のがんに対する質問に答えてくださったのは、国立がんセンターがん予防・検診研究センターのセンター長などを経て、現在は医療法人社団進興会理事長の森山紀之医師。日経BP総研メディカル・ヘルスラボ所長の藤井省吾さんがファシリテーターを務めた。

左から、日経BP総研メディカル・ヘルスラボ所長 藤井省吾さん、医療法人社団進興会理事長 森山紀之さん、日経doorsアンバサダー 安原伶香さん

藤井さん(以下、藤井) 現在、女性の11人に1人が乳がんにかかる時代だといわれています。近年、増加傾向にあるのでしょうか?

森山さん(以下、森山) 乳がんはどんどん増えていますね。食べ物が関係しているというのはデータで出ていて、食の欧米化が大きく影響していると考えられています。

森山紀之さん
医療法人社団進興会理事長。千葉大学医学部卒。86年米国Mayo Clinic客員医師として勤務、87年より国立がんセンターに勤務し、2004年同センターがん予防・検診研究センターのセンター長に就任。現在は、医療法人社団ミッドタウンクリニック理事。16年より医療法人社団進興会理事長、グランドハイメディック倶楽部理事にも就任

安原さん(以下、安原) 私は実家が代々続く和菓子屋で、家業を継いで体にいいスイーツを作っていきたいと思っているのですが、乳がん予防に効果がある食材というのはあるのでしょうか?

森山 がんに関しては食べて効果があるとはっきりいえるものは意外と少なく、「これは食べ過ぎないほうがいい」というもののほうが多いです。たとえば、胃がんは塩分のとり過ぎがよくないとされていて、実際に統計的に東北地方に罹患者が多い傾向があります。でも、そういうことを聞くと極端にとらなくなる人がいるのですが、とってはいけないのではなく、同じものを多量にとり続けること、とり過ぎることがいけないのです。

藤井 20代30代から気になってはいても、乳がんに対する市区町村が実施の対策型検診は40代からですね。

森山 医療の分野において、国が対策として行うためには統計的な根拠が要求されます。20代30代で乳がんになる人はいるけれど、率が少ないと対策をとっても死亡率にあまり影響しない。それなら「必要ないのでは?」ということになってしまうのです。

藤井 なるほど。そうすると、20代30代ではどのように向き合っていけばいいのかが問題になると思うのですが、安原さんは乳がんについて、どの程度の知識がありますか?

安原 最近は著名人が闘病を公表したり、乳がんで命を落とされる女性が増えていると感じますが、「まさか自分が……」と思っているのも事実です。特に、私たちの世代はどういう対策をしたらいいのか、曖昧なところがあります。仕事とプライベートを両立させようとすると時間がないことから、検診も後回しになりがちな面もあります。

森山 20代30代の場合は乳腺が発達しているため、マンモグラフィでは真っ白に写ってしまい、乳がんが見つけにくいことがあります。これを、デンスブレスト(高濃度乳腺)と呼びます。そのようなタイプの方は超音波検査が適しています。

藤井 では、若い世代の選択肢としては超音波検査がおすすめということでしょうか。

森山 無理にマンモグラフィ検査で被曝する必要もないということもあります。ただ、超音波検査の場合、小さな石灰化はわからないので、1年に1回は超音波検査をし、数年に1回はマンモグラフィをするというのがいいかもしれませんね。

藤井 欧米は70〜80%くらいの検診率なのに、日本は対策型の乳がん検診があるにもかかわらず40%に届かない検診率だともいわれていますよね。

森山 そうなんです。大切なのは定期的に検診を受けること。毎年、自分の誕生月に行くとか、何か決めておくと忘れることがなく、いいと思います。現在のように検診が普及していない頃は自分でしこりに気づいて来院する人が多かったので、セルフチェックの習慣を持つことも、とても大切なことです。

安原 時間がないとつい後回しになってしまいますが、誕生月など自分の中でルール化すれば、検診も前向きに受けられますね。