全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic Lupus Erythematosus)という病気を知っていますか? 20〜30歳代の女性の発症が多いにもかかわらず、同年代の女性からも認知度が低いこの疾患。「世界ループスデー」である5月10日に、ひとりでも多くの人に理解を深めてもらうための啓発イベントが都内で開催されました。

「世界ループスデー」である5月10日に日本橋で開催されたイベント「明日の私をもっと好きになる」。仕事帰りと思われる女性たちが詰めかけた会場。熱心に話に耳を傾ける姿が印象的だ
「世界ループスデー」である5月10日に日本橋で開催されたイベント「明日の私をもっと好きになる」。仕事帰りと思われる女性たちが詰めかけた会場。熱心に話に耳を傾ける姿が印象的だ

体の「勘違い」から始まる若い女性に多い自己免疫疾患

 東京・野村コンファレンスプラザ日本橋で5月10日、「世界ループスデー 〜明日の私をもっと好きになる〜」と題したイベントが開催されました。第1部は、国立研究開発法人国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター主任副センター長・妊娠と薬情報センター長の村島温子先生による講演。医師の立場からSLEという病気について解説してくださいました。

<b>村島温子(むらしまあつこ)先生</b><br>国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 主任副センター長 妊娠と薬情報センター センター長
村島温子(むらしまあつこ)先生
国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 主任副センター長 妊娠と薬情報センター センター長

 「SLEは膠原病のひとつ。膠原病は皮膚や内臓、血管に炎症・変性を起こし、様々な部位に症状が出る病気の総称で、そこには『免疫』が関わっています」と言います。さらに「SLEなどの膠原病では、『免疫』が自分の体を敵と勘違いして、攻撃してやっつけてしまうことで起こります」と説明。村島先生によると、SLEは「体の中に起こる火事」のようなものだそう。「素因があるところにいくつかの誘因(日光を浴びたり風邪をひいたり)が重なると大火事に。投薬で鎮火しても体内の火種は残っているため、再燃しないように注意する必要があります。専門医に相談しながら、上手に付き合っていくことで妊娠・出産も可能で、自分らしい毎日を送ることができます。周囲の方の理解が患者さんの負担の軽減につながります」と話しました。

●全身性エリテマトーデス(SLE)とは?
英語でSystemic Lupus Erythematosusといい、Systemicは「全身の」という意味で、皮膚、関節、臓器など全身に様々な症状を引き起こすことを表します。Lupus Erythematosus は「紅斑性狼瘡」を意味し、皮膚に狼に噛まれたような赤い斑点ができることから名付けられました。若い女性に多く発症する難病で、人によりそれぞれ症状が異なることが特徴。アメリカの歌手で女優のセレーナ・ゴメスさんもSLE患者で、昨今腎臓移植をしたことでも話題になりました。

●世界ループスデーとは?
海外では「ループス」として知られる全身性エリテマトーデス(SLE)の啓発のため、毎年5月10日を世界ループスデー(World Lupus Day)とすることがアメリカのループス財団により提唱されました。世界75カ国でこの病気を多くの方に知ってもらうための活動が行われています。