妊娠前から始める体づくり—妊娠に欠かせない栄養素を知ろう

 妊娠すると、多くの栄養を生まれてくる赤ちゃんのために使わなくてはなりません。女性がダイエットをしたり、食事制限をするなどで量もバランスも不十分で、母体に栄養素が不足していると、その分、赤ちゃんにも栄養が行き届かなくなるため、低体重で生まれるなどのリスクが増えます。

妊娠に欠かせない栄養素
●「鉄分(フェリチン)」不足の女性が多い
血液中の鉄分の指標であるヘモグロビンは足りていても、妊娠・出産などいざという時に使うフェリチンと呼ばれる貯蔵鉄が不足している「隠れ貧血」の女性が多くいます。「鉄が不足していると低出生体重児、未熟児、周産期死亡の危険があります。鉄は妊娠にとても重要な栄養素。日頃から意識して、サプリメントなどで補うのもいいでしょう」(佐藤先生)

●「たんぱく質」は毎食とるべき栄養素
免疫力を高めるだけでなく、ヒップやバスト下垂の予防、ホルモンの材料になるなど、美容にも欠かせないたんぱく質ですが、食べ貯めることができません。4割近くの女性がたんぱく質不足に陥っています。「1日1回程度、肉や魚を食べているというだけでは、たんぱく質は全く足りていません。精神安定に必要な脳内物質をつくるのにもたんぱく質は欠かせません。また、赤ちゃんはたんぱく質のかたまりですから、赤ちゃんのためにもたんぱく質は充足させておく必要があります。最近増えている産後うつは、お母さんのたんぱく質が不足し、セロトニンなどが分泌できないからです。たんぱく質は意識して毎食、食べるようにしましょう」(佐藤先生)

●「葉酸」は妊娠を考える2〜3カ月前からとりたい
赤ちゃんの健全な発育を助けるのに欠かせない栄養素として、多くの人から認知されている葉酸。妊娠する2〜3カ月前から、サプリメントで400μg/日摂取する必要があります。「日本では神経管閉鎖障害の赤ちゃんが毎年700人弱生まれていて、これは欧米の6〜8倍の発症率とされています。葉酸はふだんの食事から十分な量をとるのが難しいので、サプリメントでしっかり補いましょう」(佐藤先生)

●「ビタミンB6」摂取はつわりの軽減につながる
妊娠中にビタミンB6が減少すると、つわりや嘔吐がひどくなる原因になるほか、赤ちゃんの夜泣きやけいれん発作、無感動、落ち着きがなくなるなどの原因に。「逆に、しっかりB6をとることで、つわりの軽減につながると考えられています」(佐藤先生)

●「亜鉛」が少ないと妊娠率の低下も
ナッツ類や海藻などに含まれる亜鉛は、不足すると妊娠合併症や味覚障害などのリスクがあるそうです。「血液中の銅濃度が高く、亜鉛濃度が低くなると妊娠率が下がるという報告もあります」(佐藤先生)

●「ビタミンD」不足は着床に影響
ビタミンD不足は妊娠糖尿病や子癇前症、低出生体重児などのリスクになる可能性があるとか。手のひらほどの面積を1日15分、太陽光を浴びることで生成される物質ですが、日焼けが気になる季節はサプリメントで補うのもお薦めです。「ビタミンD不足の人は着床が悪いということが報告されています。実際、当院の不妊の患者さんの8割以上が検査の結果、ビタミンD不足でした」(佐藤先生)

エネルギー摂取と運動、質のよい睡眠で体づくりを

 日本の女性にやせすぎの人が多いことは、他の先進国と比べても顕著ですが、20代女性は、特にエネルギー不足が深刻化しています。国民健康・栄養調査ではBMI18.5未満をやせ型としていますが、20代のやせ型の人は22%ととても多くいます。やせ型の女性が妊娠すると、生まれてくる赤ちゃんが低出生体重児になりやすいことが問題になっています。

 「昔は、『小さく産んで大きく育てるのがいい』といわれていましたが、これは赤ちゃんのためにはよくないことが分かってきました。お腹の中で栄養が少なかった赤ちゃんは栄養を吸収しやすい体質になり、将来、太りやすくなる可能性があるのです。つまり、小さく生まれた赤ちゃんは成人病のリスクが高まることが分かってきました」(佐藤先生)

 妊娠を考えている人は、やせ型にならないように栄養をしっかりとることが大切です。そのほか、妊活を成功させるためには、自律神経を整える、筋力アップ、性機能を高めるために適度な運動や1日7〜8時間の睡眠も欠かせません。質のよい睡眠のために暗くして寝る、アルコールやカフェインを控えめにするなど工夫することも大切です。

プレコンセプションケアで今から始める「妊活」

 自分たちの生活習慣を見つめ直して健康的な体づくりをすることで、元気な赤ちゃんを授かるチャンスを増やすことが重要になってきていると佐藤先生は話します。

「運動や食生活、睡眠の見直しをするだけでなく、妊娠しやすい体であるか、結婚したらすぐにカップルで検査を受けることをお勧めします。もし、妊娠しにくい何らかの原因が見つかれば、早く、その原因を治療することができます。妊活に取り組むのが早ければ早いほど、妊娠のチャンスが増やせるのですから」(佐藤先生)

 元気な赤ちゃんを授かるための準備は、思い立ったらすぐ始めるのがポイントです。そして正しい知識があれば、無用に焦ることなく、妊活に取り組めることが、肌で感じられた講演でした。

 なお、昨年11月に東京・日本橋のオフィス街にオープンした「フィーカ・レディースクリニック」は、一般産婦人科診療の他、プレコンセプションケア(妊娠しやすい体づくり)の提供や栄養指導なども行うクリニック。会社の始業前、終業後の時間帯にも受診ができる日を設定するなどして、働く女性を、トータルにサポートしてくれます。子どもが欲しい、と考える人がすぐに相談できるクリニックなので、気になる人は受診をしてみては。

おうちで手軽に排卵日予測ができる検査薬を紹介

 佐藤先生の基調講演の後は、働く女性の妊活を応援するロート製薬 広報・CSV推進部の宮下侑子さんから、「ドゥーテスト(R) LHa 排卵日予測検査薬」の紹介がありました。

ロート製薬の宮下侑子さん
ロート製薬の宮下侑子さん

 「“赤ちゃんを授かりたい”をサポートする「ドゥーテスト(R) LHa 排卵日予測検査薬」は、排卵日を約1日前に知ることができます。次の月経予定日の17日前から1日1回、同じ時間帯に検査をします。検査薬の先端部分に2秒尿をかけるだけで、5分程度で判定が可能です。基礎体温グラフからだと排卵が事後にしか分かりませんが、検査薬を使うことで排卵日が事前に予測できるので、パートナーにタイミングを事前に伝えることもできますよ」(宮下さん)

 「ドゥーテスト(R) LHa 排卵日予測検査薬」は、薬剤師のいるドラッグストアで買えるほか、ロート製薬の通販サイトなどでも入手できます。通販の場合は、薬剤師による確認という1プロセスを経ての購入となります。

 「女性の声を聞くと、『妊活したい』とパートナーに言いづらい人が多いようで、女性ひとりで取り組みがちなのですが、ぜひパートナーと一緒に“ふたり妊活”に取り組んでほしいのです。男性には、医学的な情報や論理で話をすると効果的ですよ」と宮下さん。子どもをもつ先輩ママとして、心強いアドバイスをしてくれました。

取材・文/塩野里美 写真/木村和敬

■関連サイト
・「ドゥーテストLHa」(ロート製薬)