5月18日(土)、19日(日)に東京ミッドタウン(東京・港区)にて開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2019」。働く女性が知りたい、旬の情報が目白押しのセッションの中から、自分と新しい命のために知っておきたい『働く女性のための妊活セミナー』の模様をリポート。前編では、産科婦人科舘出張(さんかふじんかたてでばり) 佐藤病院の院長・佐藤雄一さんによる基調講演の様子をご紹介します。
排卵日の数日前からの性生活がポイント。40歳以上は不妊率が6割以上に跳ね上がる
江戸から続く女性の専門病院の12代目院長として、女性の生涯にわたる医療に携わる佐藤雄一先生に、妊活のために知っておきたいことを教えていただきました。
現代の日本社会においては女性の労働力が求められるようになった一方、働きながらキャリアアップをし、さらに、妊娠・出産も担う女性は大変になってきています。しかも依然として男性よりも家事や育児への負担が大きいのが現状です。
そんな女性には毎月リズムがあり、初経から閉経までの間に出産や更年期を経験するなど、女性の一生は女性ホルモン(エストロゲン)の影響を大きく受けています。女性が妊娠を考える際には、「私たちの体は女性ホルモンの影響を受けている」ということを踏まえておくことが大切だといいます。
「現在は初産年齢も高齢化しており、35歳以上の人が多いです。40歳で出産している人は多いですが、実は加齢とともに不妊のリスクは増加します。35〜39歳の不妊率が30%なのに対し40歳以上になると64%に上昇します。ここからは、少しでも早い時期に妊活を始めることで、妊娠の成功率が上がる可能性が高いことが分かります。しかし、現状は、妊活する年齢の高齢化も背景にあって、赤ちゃんを希望するカップルの10〜15%が不妊になっているのです。因みに不妊症とは、生殖年齢にある男女が妊娠を希望し、避妊せずに性交を断続的に行っているにもかかわらず、一定期間、妊娠の成立を見ない場合と定義されています。この一定期間というのは1年間が一般的です」(佐藤先生)
性生活の頻度については、1〜2日おきに性交があるのが望ましいそうですが、忙しくて回数が少ないのであれば排卵日を把握することが欠かせません。基礎体温などで排卵日を予測して、性生活を持っているカップルが多いのではないでしょうか。その際に気を付けたいのは、性生活のタイミング。
「精子は2〜3日生きているけれど、卵子の寿命は長くても約24時間。ですから、排卵日当日ではなく、排卵日前に性交がないと受精しにくくなります。排卵日の数日前から、複数回、性生活を持てるのが理想です。排卵日の予測は、アプリなどでもできますが、より、正確に排卵日を知りたい人は、市販の排卵日チェッカーを活用するのも有効です」(佐藤先生)
妊娠回数が減ったことが、婦人科疾患や月経トラブルの増加を招いている
佐藤先生によると現代は、月経トラブル、そのなかでも、「子宮筋腫」「子宮内膜症」という2大婦人科疾患が増えているそう。特に子宮内膜症は、腰痛や腹痛など、いわゆる月経痛と呼ばれる症状を伴う「月経困難症」の原因になるほか、不妊症の原因にもなるので予防が肝心です。子宮筋腫は、月経痛がひどくなる、月経の量が増える、長引くなどで女性の生活の質を落とすほか、筋腫のできている場所によっては不妊の原因にもなります。
一方、働く女性の8割に症状があるPMS(月経前症候群)は、仕事のパフォーマンスへの影響が近年、問題視されています。
「昔の女性は初経が14〜15歳頃と遅く、妊娠回数も多かったため、生涯の月経回数が50回ほどといわれます。しかし、現代女性は初経が早くなっているうえ、出産回数も激減しており、生涯の月経は450〜500回と多くなっています。その分、排卵の回数も必然的に多くなってしまう。この排卵回数の増加が、現代女性に卵巣がんが増えている原因のひとつでもあるのです」(佐藤先生)
こう見てくると、女性は月経周期の1カ月のうちの大半を月経痛とPMSに悩まされているということもできます。何もなくて調子がいいのはたったの1週間という人もいるということです。月経関連の不調とうまく付き合うには、自分の症状が出た日を記録して、上手につらい日に重要な行事を入れないようにスケジュールを調整するなど、症状と向き合うためのセルフケアが欠かせませんが、「低用量ピルで、子どもが欲しいと思う時期まで、排卵を止めるのもひとつの方法です。低用量ピルには、月経痛やPMSの症状を和らげる、肌あれの予防、卵巣がん予防などメリットがたくさんあります。毎月、つらい思いをしている人も、そうでない人も、一度、婦人科で相談してみることをお勧めしたいです」(佐藤先生)
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