給与明細は「勤怠」「支給」「控除」の3パーツ

 給与明細にはほとんど目を通したことがない、あるいは受け取っても「差引支給額(振込額)」、いわゆる手取り額だけをチェックしたらゴミ箱へ--こんな人はいませんか。「給与明細をちゃんと読める人の方が幸せな人生を送れる」と私は思っています。なぜなら、明細書にはあなたの安心や、お得につながる可能性の高い項目がたくさん含まれているからです。

 給与明細は「勤怠」「支給」「控除」の3つのパーツで構成されています。
「勤怠」は出勤日数や有給休暇取得日数、時間外労働時間数など、給与計算のベースになる実績が記載されています。

 「支給」は基本給のほか、時間外労働手当、通勤手当や資格手当、役職手当など、会社があなたに対して支払う金額が記載されています。

 もう1つ、「控除」には所得税や住民税などの税金と、厚生年金保険、健康保険、雇用保険などの社会保険料といった、あなたが支払っている額が記載されています。

 「勤怠」などを基準に「支給」額が計算され、そこから「控除」が差し引かれ、手取り月収となる、という数字の流れですね。

「控除」の中身と計算方法をマスター

 「控除」欄の内容は大きく、税金と社会保険料の2つ。税金は社会に参加するための会費、社会保険料はいざという時のセーフティネットと表現されます。計算方法や、どんなシーンで頼りになるのかを知ることで、「引かれたくない」「引かれて残念」と思いがちな感情から、きっと解放されます。

 給与から自動的に引き落とされる税金は、所得税と住民税。この2つの算出方法は少しずつ違います。

 「所得税」は累進課税制度。つまり所得が多い人ほど高い税率で納める税額が計算されるルールになっています。税率の幅は5~45%。お給料全額に税率をかけるのではなく、お給料から経費(給与所得控除)や、誰もが差し引かれる基礎控除、扶養家族分が差し引かれる扶養控除など、一定の金額が差し引かれたあとの「課税所得」に税率をかけて計算します。会社員など給与所得者の場合、所得税は、勤務先の経理部門などが、そうした計算を盛り込んだ「源泉徴収税額表」をもとに、毎月支払われるお給料から“概算”を徴収しています。

 所得税は各年の1月1日から12月31日までの1年間で計算します。その1年間に結婚、出産、生命保険の契約など、税金額に影響するライフイベントが起こりえますので、12月にまとめて経理部門などが再計算し、会社が預かっていた概算の税額分から正確な所得税をあなたの代わりに納税します。  12月の手取りが多くなる場合は、毎月の概算の源泉徴収額がやや多く、1年通して行った厳密な計算との差額が返ってきているケースです。これを「年末調整」といいます。

「住民税」の税率は一律10%(所得割)。道府県民税と市町村民税(東京23区は特別区民税)をあわせて10%です。ただし自治体によって環境保全のために微増したり、逆に微減しているケースもあります。  収入の額に関係なく定額で納める(均等割)部分もあり、その額は年間5000円だったり6000円だったり、自治体ごとに異なります。

 所得税はその月のお給料に応じて納税するのに対して、住民税は「前の年1年間の所得をもとに計算された額」を翌年の6月から納税し始めます。

2年目で手取りが減るのは住民税の影響

 住民税の“後払い”という特徴から、社会人2年目の人が、1年目の時よりも手取りが少なくなったと感じがちです。1年目は、前年に所得がなく住民税を引かれないことがほとんど。一方、2年目の6月からは、前年の所得に応じた住民税が引かれ始めるためです。

 2年目の住民税は、新社会人4~12月の9カ月間の所得をもとに計算されます。3年目になると、初めて1年分の所得に課税されるので、6月の住民税はまた増えたと感じる人が多くなります。

 仕事に対する評価が下がったためではなく、社会参加の証し=住民税の仕組みによるものと理解しておけば、がっかりは不要ですね。

POINT!

 ■ 税金がかかる課税所得とは?
 ――― 収入(給与)- 各経費や控除 = 「課税所得」
 ■ 「所得税」「住民税」は?
 ―――「課税所得」×税率で計算される
 ■ 所得税率は?
 ―――  5%~(最高で45%)。その年の所得額で計算
 ■ 住民税率は?
 ――― 10%一律。 前年の所得額で計算
 *このほか自治体により異なる、年5000円程度の定額「均等割」もある

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