社会保険料が分かればむだな出費が減らせる

 控除欄の2項目め「社会保険料」は、将来やもしもの時におカネが支給され生活が守られる「セーフティネットとしての備え」。年金保険料、健康保険料、雇用保険料の3つがあります。また40歳からは介護保険料も徴収されます。

 社会保険料は原則、4~6月の給与額をもとに等級が決められ、その年度9月~翌年8月)の金額が決まります。「4~6月は残業をしない方がいい」と聞いたことがあるかもしれません。それはその間、残業代で給与が多くなると社会保険料が高くなってしまうためです。

 しかし社会保険料を多く払うことで、受給する立場になったときには金額が多くなる項目もあるので、「4~6月の残業は損」とは言い切れないことも知っておいてください。むろん、働き方改革の時代、可能な限り残業は控えたいですね。

 給与明細で社会保険料の額を「多すぎる」と感じる若い会社員は多いはず。けれど、会社員の社会保険料は、勤務先が半分以上負担しています。つまり実際には、自分が支払う保険料の倍額以上納めているのですから、比較的手厚く有利な内容のセーフティネットに守られているのです。

厚生年金は現役世代も老後も守る仕組み

 厚生年金保険料は、一定の年齢(60~70歳)で受給が始まる老齢(厚生)年金のために支払っています。しかしあわせて、自分が障害を負った場合には要件を満たせば、生涯にわたって障害年金が受けられます。また万が一、若くして死亡した場合には、家族に遺族年金が給付される機能もあります。

 さて、「きっともらえない」という噂で不安になっている若い世代も多い「老齢年金」についても、給与明細を手に基本を知ることが大切です。

 月収約22万円の人が自分で支払う厚生年金保険料は月額2万円ほど。22~60歳までの38年間、収入に変動なく加入し続けると、月額約11万円の老齢年金が受給できます(2019年度)。つまり、年金受給開始から7年(※)で、支払った金額のもとがとれる計算になり、有利になるケースが多そうです。加えて障害年金や遺族年金の機能もあるわけです。

 「ソンでは?」と感じるおカネの不安は、このように確認してみる習慣をぜひ身につけてください。不満や不安が消えますし、安心もプラスされますよね。
 ※2万円×38年の保険料総額を11万円の受給額で割った期間

社会保険料は傷病や失業時の備え

 健康保険料の主なメリットは、医療費の自己負担額が3割ですむこと。病院で健康保険証を提示し3000円を支払う場合、実際にかかっている医療費は1万円。7000円分は皆で納めている保険料から補てんされています。「高額療養費制度」という1カ月の医療費の自己負担額に上限を定める制度も付帯されています。一般的な収入がある場合、手術などで医療費がかさんでも約9万円を超えた部分は健康保険で賄われるため、月数百万円などに及ぶ大金を支払う心配はないといえます。

 雇用保険は、失業した際に基本手当が支給され、新しい仕事を得るまでの間の生活の支えとなり、転職のためのスキルアップ補助を受けられる仕組みです。介護保険は、老後、介護が必要な状態と認定されれば一定割合の自己負担額で公的な介護サービスを受けられる仕組みです。

 社会保障は参加者全員がお金を出しあい、困った事態に陥った人にみんなから集めたおカネを使って、最低限の安心を与えるための仕組み。なので、本来は、損得で測ることのできない制度です。税金や社会保険料などの控除欄の項目の意義が分かると、記されている金額の印象がだいぶ変わりませんか。

 社会保障は参加者全員がおカネをよけておき、困った事態に陥った人にみんなから集めたおカネを使って、最低限の安心を与えるための仕組み。なので、本来は、損得で測ることはできない制度です。税金や社会保険料などの控除欄の項目の意義が分かると、記されている金額の印象がだいぶ変わりませんか。

 既に備えられている保障を理解していれば、公的な保障と貯蓄で足りない分だけを民間保険に加入するなど、おカネをむだなく効果的に使えるようにもなります。

<b>この連載を監修するのは、風呂内亜矢さん</b><br> ふろうち・あや●ファイナンシャル・プランナー(FP)、 CFP(R)認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー。会社員時代、26歳の時に貯蓄80万円でマンションを衝動買いし物件価格以外の諸経費に驚きマネーについて学び始める。2013年にFPとして独立。各メディアでマネー情報を精力的に発信。NHKや民放の情報番組への出演、著書共に多数。最新書籍は『ほったらかしでもなぜか貯まる!』(主婦の友社)。
この連載を監修するのは、風呂内亜矢さん
ふろうち・あや●ファイナンシャル・プランナー(FP)、 CFP(R)認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー。会社員時代、26歳の時に貯蓄80万円でマンションを衝動買いし物件価格以外の諸経費に驚きマネーについて学び始める。2013年にFPとして独立。各メディアでマネー情報を精力的に発信。NHKや民放の情報番組への出演、著書共に多数。最新書籍は『ほったらかしでもなぜか貯まる!』(主婦の友社)。

(文/風呂内亜矢 イラスト/小迎裕美子 構成/太田留奈)

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