キャッシュレス決済比率、日本は20%、韓国は90%超、英国は70%弱

 現在、日本人のキャッシュレス決済比率は20%程度。諸外国に比べて低いといえます。その大きな理由は、日本では長らく現金を使って安心して支払いができ、金融機関に対する信頼も高く、現金取引にあまり問題がなかったため。諸外国のキャッシュレス比率の高まりは、現金決済に関する問題を解決しようとした結果だったという部分もあるわけですね。

 日本では、偽造困難と評される紙幣が発行され、ほぼ誰もが銀行口座を開設することができます。ATMの数は主要先進5か国(G5)の中で単位面積あたりで断トツの1位単位。コンビニエンスストアにも設置され、確かに現金の引出しに困ることもありません。

*参考資料:「キャッシュレス・ロードマップ2019」(社)キャッシュレス推進協議会。 IMF“financial access survey”、大和総研作成「キャッシュレス化が変える金融・経済の未来図(2019年3月)」

2012年のロンドン大会でバスもカード決済に

 他の国を見てみましょう。お隣の韓国は既に90%超がキャッシュレス決済です。政府主導の多彩な施策――キャッシュレス決済の税制優遇など――により一気に広がりました。キャッシュレス化が50%を超える北欧スウェーデンは、1980年代後半からの経済危機以降、防犯対策、経済再生のために、やはり国をあげてデビットカードの普及に努め、2007年から交通機関の利用での現金使用はすべてなくなりました。私が2018年に訪れた中国・深圳でも、地元の人たちが通う市場も小さな商店も、道で歌を歌う人のチップさえ、コード決済になっていました。

 英国のキャシュレス決済率は現在70%ほど。2012年のロンドン大会を契機にPayments Council主導でキャッシュレス化への推進が図られ、あのロンドンバスの乗車には、現金は使えない半面、国際ブランドのクレジットカードやデビットカードでタッチ決済を利用できます。バスや電車に乗るためにコインや専用の交通カードを用意する必要がなくなると、旅行者は非常に助かります。

 日本政府もいよいよ2020年に向け一段とキャッシュレス化を推進し、大阪万博が開催される2025年までに40%、最終的には80%を目指しています。

キャッシュレス決済のメリットは日本経済にも

 キャッシュレス決済を使いこなすことで、買い物の履歴データが自動的に残るのは、家計管理の面から見てとても大きな魅力です。混雑するATMに並んだり、ATM引出し手数料を払うことも大幅に減ります。海外を旅する場合にクレジットカードやデビットカードが1枚あることで多くのメリットが得られることは、前回解説しました(第2回)。

 長い目で見た場合には、年間数兆円という政府の紙幣・貨幣の発行や輸送コスト、金融機関のATM管理コストや人件費、企業の流通コストなどが削減されるという試算も見逃せません。

10月の消費税増税以降の家計対策としても注目

 今年の10月、消費税率が8%から10%へ引き上げられて以降の政府の景気対策にも、キャッシュレス決済への優遇措置が用意されており(詳細は第6回で解説予定)、来年は東京2020開催もあり、2019年はまさに、キャッシュレス決済習慣のスタートを切るべき年といえますね。

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