油の健康効果が注目されている今、店頭でもさまざまな植物油が手に入るようになりました。その中で日本の食卓をずっと支えてきたのが、ソイオイル(大豆油)なのです。自宅で食事を作って食べる機会が増えている今、その上手な使い方とひと手間でぐんとおいしくなるコツを料理のプロに教えてもらいました。

大豆から搾取されたソイオイル(大豆油)は、中国料理には欠かせない存在

 私たちが消費している大豆の約9割が輸入され、その約70%はアメリカから調達されているのを知っていますか。そのうちの約80%が大豆油としてサラダ油に加工され、アメリカ産の大豆は日本の食卓を支えています。風味・コク・香りにすぐれ、必須脂肪酸やビタミンEなどの主要な栄養素の宝庫でもある大豆油。とても身近にあるのに、日本の消費者にあまり認識されていない大豆油への理解を深めてもらおうと、アメリカ大豆輸出協会主催による「ソイオイルマイスター検定」も2017年にスタートしました。

 そんなソイオイルマイスターの資格を持ち、管理栄養士として活躍している藤橋ひとみさんが、大豆油と関係の深い中国料理のプロであり、日本中国料理協会副会長の脇屋友詞さんに大豆油の魅力と活用法について聞きました。

<b>脇屋友詞さん(左)</b><br>日本中国料理協会 副会長<br>'73年15歳で料理の道に入り、赤坂「山王飯店」、「東京ヒルトンホテル」、「キャピトル東急ホテル」等での修行を経て、'85年27歳で都内ホテルの料理長、'92年同ホテル総料理長になる。'96年、「トゥーランドット游仙境」代表取締役総料理長に就任、'97年、パン パシフィック ホテル横浜(現横浜ベイホテル東急)中国料理総料理長に就任。その後、「Wakiy一笑美茶樓(いちえみちゃろう)」「Wakiya Gramercy Park Hotel」「Wakiy迎賓茶樓(げいひんちゃろう)」「トゥーランドット臥龍居(がりゅうきょ)」などを次々とオープン。現在、東京、横浜で四店舗のオーナーシェフを務める。NHK「きょうの料理」をはじめとするテレビ番組や雑誌などを通して中国料理や中国茶の楽しさを広く伝えている<br><br><b>藤橋ひとみさん(右)</b><br>I's Food & Health LABO.代表<br>管理栄養士/ソイオイルマイスター<br>重度のアトピーを食事で体の内側から改善した経験をきっかけに、「すべての人が毎日の食事でセルフメディケーションをし、心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現」を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動を開始。セミナー講師、レシピ開発、商品開発コンサルティング、メディア出演、コラム執筆など精力的に活動中。大の大豆・発酵好きでもあり、国内、海外の豆腐マイスター認定講座、おから味噌作りワークショップにて講師を務める
脇屋友詞さん(左)
日本中国料理協会 副会長
'73年15歳で料理の道に入り、赤坂「山王飯店」、「東京ヒルトンホテル」、「キャピトル東急ホテル」等での修行を経て、'85年27歳で都内ホテルの料理長、'92年同ホテル総料理長になる。'96年、「トゥーランドット游仙境」代表取締役総料理長に就任、'97年、パン パシフィック ホテル横浜(現横浜ベイホテル東急)中国料理総料理長に就任。その後、「Wakiy一笑美茶樓(いちえみちゃろう)」「Wakiya Gramercy Park Hotel」「Wakiy迎賓茶樓(げいひんちゃろう)」「トゥーランドット臥龍居(がりゅうきょ)」などを次々とオープン。現在、東京、横浜で四店舗のオーナーシェフを務める。NHK「きょうの料理」をはじめとするテレビ番組や雑誌などを通して中国料理や中国茶の楽しさを広く伝えている

藤橋ひとみさん(右)
I's Food & Health LABO.代表
管理栄養士/ソイオイルマイスター
重度のアトピーを食事で体の内側から改善した経験をきっかけに、「すべての人が毎日の食事でセルフメディケーションをし、心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現」を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動を開始。セミナー講師、レシピ開発、商品開発コンサルティング、メディア出演、コラム執筆など精力的に活動中。大の大豆・発酵好きでもあり、国内、海外の豆腐マイスター認定講座、おから味噌作りワークショップにて講師を務める

藤橋ひとみさん(以下、藤橋) ソイオイル(大豆油)は大豆から搾油される最も代表的な植物油で、サラダ油のほか、マヨネーズやマーガリンの原料として広く用いられ、日本国内では植物油消費量の約4割も占めています。サラダ油として調合されているので、一般には大豆油としてあまり認識されていませんが、中国料理とソイオイル(大豆油)はとても密接な関係にあり、必須の調理油だと聞いています。脇屋シェフと大豆油の出合い、中国料理と大豆油の関係についてお聞かせください。

脇屋友詞さん(以下、脇屋) 私がこの世界に入ったのは昭和48年(1973年)で、当時は中国料理における油は100%ラードの時代でした。見習いは先輩料理人が来るまでに固まっているラードを寸胴鍋に入れて火にかけ、準備するのが日課でした。それから5年後、オーナーの方針で健康面を考え、ラードとソイオイル(大豆油)を半々で使用するように。そのさらに2、3年後には大豆油を100%使用するようになり、ラードはネギ油など仕上げに少しだけ使われるように変わっていきました。

藤橋 ほかの中国料理店も同様に変わっていったのでしょうか。

脇屋 当時の中国料理店は日本人の料理長が少なく、横のつながりが非常に強かったので、ほかの店も同じように変わっていき、日本中に拡がっていったのだと思います。でも、一気にではなく、半々にしてからだんだんと変えていったので、その変化に気づいたお客様はほとんどいないと思います。ソイオイル(大豆油)はラードと比べるとコクは若干少ないけれど、大豆本来の旨みが十分にあるし、ヘルシーな油。昔の中国料理は一皿の量も多く、食べきれないくらいのボリュームがあるのがおもてなしだとされていました。でも、時代と共にちょっとずついろいろと食べたいという流れに変わっていき、さらに、お客様もわれわれ料理人も体にいいものを求めて健康志向に。ソイオイル(大豆油)はそうした変化ともマッチして浸透していったのでしょう。

藤橋 ソイオイル(大豆油)には、体が必要とするオレイン酸、リノール酸がバランス良く含まれていますしね。日本で使われているソイオイル(大豆油)の多くは、米国産の大豆から搾油されていますが、米国産大豆および、それから作られるソイオイル(大豆油)については、どうとらえていますか。

脇屋 アメリカ産の大豆は安心安全な管理のもとで作られているという点は、消費者にとっては嬉しいことではないかと思っています。

藤橋 そうですね。どういう経緯をたどって私たちのもとにやってきているかがしっかり目に見えるのは安心できますね。