「キャリアもマネーも『変わらないこと』がリスクになります」(森本千賀子さん)。働く女性にとって、人生100年時代に理想の生き方を実現するための「キャリア戦略」と人生を豊かにする「マネー知識」は、欠かすことができない二大スキルと言えます。この二大スキルを身につけるコツを、日経doorsの連載でもお馴染みの森本千賀子さんと、資産形成のプロである三井住友DSアセットマネジメントの谷本達宏さんにお聞きしました!

モリチ流自分のバリューを上げるポイント

 2019年11月、都内某所にて「QOL(Quality of Life)セミナー ~お金を味方に付けるキャリア術」が開催されました。第1部ではリクルートで企業の採用支援や人材戦略コンサルティングを手がけ、2017年に起業した、株式会社morich代表取締役兼All Rounder Agentの森本千賀子さんが登壇。「自身のバリューを高めるキャリア術」と題して、自分の市場価値を高めるキャリア戦略について話してくれました。まずは、すぐに使えるノウハウ満載のモリチ流キャリア術からご紹介しましょう!

「キャリアもマネーも『何もしないこと』がリスクになります」と語るMorich代表取締役の森本千賀子さん
「キャリアもマネーも『何もしないこと』がリスクになります」と語るMorich代表取締役の森本千賀子さん

 私は新卒でリクルートに入社して25年間転職エージェントの仕事をし、2年前に独立してオールラウンダーエージェントという肩書で仕事をしています。20数年前の就職当時の日本では転職はネガティブなイメージでしたが、今や転職は当たり前の時代になりました。時短勤務やテレワークなど働き方も多様化し、契約・派遣社員、フリーランスなど、雇用形態も“正社員”一辺倒ではなくなり、選択肢も広がりました。

 一方で、早ければ10年後遅くとも20年後には日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替される可能性があるともいわれています。先日、AI開発企業の社長から今取り組んでいるプロジェクトの話を聞いて愕然としたんです。「ある業務をやるのに人間だと200時間かかるが、その会社が開発したAIの技術を使えば15秒でできる」というのです。そんな時代がすぐそこまで来ています。

 ですから今は「変わらないこと」がリスクになります。自己責任で戦略的にキャリアを作り、スキルを磨くことが求められています。1日の1/3の時間とエネルギーを働くことに投資しているのですから、バリューを高めて1円でも時間給をあげて回収率を高めたいですよね。では、ちょっと意識や考え方を変えるだけで自分のバリューをあげられるポイントを紹介しましょう。

キャリア戦略① 希少性(マイノリティ)

 ある競技の五輪選手が、大学で初めてその競技に触れたと聞いて驚きました。それなのに五輪に出場できたのは、彼いわく「マイナースポーツで競合相手が少なかったから」。なるほど! と思いました。ビジネスの世界も同じで、マイノリティにこそ勝機があります。ねらい目はブルーオーシャン(未開拓の分野)。キーワードは「逆張り」と「掛け算」です。

 「逆張り」は株式投資で、相場のトレンドと逆の取り引きをすること。私が就職する時は女性の営業職は少なかったので、そこを狙いました。当時入社した1993年は営業職女性で採用されたのは私一人だけでした。同期の中で同じ程度の業績を出しても、女性というだけで注目してもらえました。

 「掛け算」は専門性を増やすこと。ある分野でオンリー1を目指すのも大事ですが、1つでなく2つ、3つと得意分野を増やして掛け算するとより誰にも負けない強みになります。そこに「女性」を掛け合わせると、さらに希少価値が増すわけです。まだまだ少ない女性リーダー、女性管理職を目指すのも「希少価値」と言えます。

 また、キャリアを積む時にぜひ心がけてほしいのは、前倒しで努力して周囲からの「信頼貯金」の残高を増やすことです。特に出産後は自由な時間が減るので、時間が自由になるうちに頑張ってキャリアを積んでおくのがおススメ。「信頼預金」が多ければ、出産後に復職する時に大きな価値として“エンプロイヤビリティ(雇用されうる力)”も高まるはずです。

キャリア戦略② 変化対応力

 様々な企業の経営者や人事担当者が求める人材について話すとき、共通して出てくるのは「変化対応力」という言葉です。いくら資格を持っていても、数年先にはその仕事はAIにとって代わられるかもしれません。そのときすぐに違う選択肢を選ぶことに躊躇がないマインドセットを身につけておくことが大事。

 女性は新しいこと、初めてのことに挑戦するのにものすごいストレスがかかり苦手な傾向があります。敢えてそこにチャレンジすることで変化対応力が鍛えられます。私もリクルートでは異動が多くて理不尽だと思っていましたが、異動先の同僚と早く仲良くなる、キーパーソンを見極めるなどビジネスで必要な力が培われ、変化対応力も上がりました

 キャリア理論では「同じことを連続してやっていると踊り場がくる。非連続でキャリアを積むことが成長につながる」と言われます。思い切って働く場所を変えて力をつければマーケットバリューが上がり、成長カーブがグッと上向きます

モリチ流キャリア術の極意に、約120人の働く女性が熱心に聞き入った
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