親になったことが自分のキャリアや生き方を考えるきっかけに

──お二人は育休推進などの社内風土醸成のために、制度設計や意識改革に取り組んでいると聞きました。

久保田 私はアシュアランスリーダーとして組織変革を担当していて、「ダイバーシティ&インクルージョンにはPwCの将来がかかっている」と社員に対して繰り返しメッセージを発信しています。多様性を認めて受け入れることが、PwCはもとより社会をいい方向に変えていくからです。当人だけでなく上司の意識も重要なので男性育休取得率をモニタリングし、希望に応じてきちんと育休を取らせるように指導しています。デジタル化もキーになるので、インフラ整備にも力を入れています。スマホで会議ができれば洗濯機を回しながらでも仕事をしてもいいわけで(笑)、さらに柔軟な働き方が進むでしょう。

中山 厚生労働省も「イクメンプロジェクト」をバックアップしているし、PwCは久保田さんのようにリーダーの強いコミットメントもあるので育休取得や働き方改革は比較的進んでいると思っています。ただ、まだ情報が十分にいきわたっていない部分があり、自分で動いて情報を取りに行かないとせっかくの制度を使えずに終わってしまうこともあります。ですから制度をフル活用した私のような現役世代が、これから出産・子育てする世代に向けて情報を伝えていきたいと考えています。

──具体的にはどんな活動や取り組みをなさっていますか?

久保田 私がサポートしている社内の「ワーキングペアレンツ・ネットワーク」は子育て中や予備軍の人を結びつける取り組みで、メンバーは200人超です。私もそうでしたが、育児は初めての体験だから、不安や悩みを相談する相手がいるだけでもずいぶん楽になります。私は活動をバックアップするだけでなく、1人の子育て経験者として自分の体験を話したり、相談に乗ったりすることもあります。「キャリアを諦めることになるのでしょうか」「ワンオペ育児で苦労しています」といった悩みが寄せられますが、同じネットワークの仲間からアドバイスをもらえれば心強いですよね。

中山 私は部内ミーティングで育休経験を発表したら好評だったので、自分から手を挙げて7月に全社向けのオンライン勉強会を開催しました。私の育休体験のほか、出産前後の女性の健康状態、男性のフォローの必要性、出産や育休にまつわる制度などについても紹介しました。さらに「家事育児は女性がするもので男性は手伝う立場」「稼いでいない方が家事育児をやるべきだ」といった思い込みは本当に自分の価値観なのか?と問いかける場も設け、1時間ながら盛りだくさんの内容となりました。200人もの人が参加してくれて、「勉強になった」「必須研修にしてほしい」という声のほか「自分も育休を取りたかった」という男性管理職や「自分のキャリアや生き方を考えるきっかけになった」という若手女性もいました。幅広い年代の方にニーズがあるんだ、と大きな手ごたえを感じました。

中山さんが企画した「男性の育休オンライン勉強会」。PwC Japanグループでは、男性育児休暇取得率100%を目指してこうした取り組みが行われている。
中山さんが企画した「男性の育休オンライン勉強会」。PwC Japanグループでは、男性育児休暇取得率100%を目指してこうした取り組みが行われている。