将来、結婚・出産する時は今より必ずいい時代になっている

──昇進が遅れることが不安で育休取得に二の足を踏む人も多いと思います。長い目で見ると育休はキャリアにどんな影響がありますか?

中山 私も新卒で入った会社でキャリア志向でバリバリ働いて上を目指していたので、キャリアの中断を不安に思う気持ちはよく分かります。ただ、私は転職後に“人生100年”を意識したタイミングで子どもが生まれ、マインドセットが変わりました。仕事最優先の人生より、夫婦共に仕事も人生も両方楽しみたいと考えるようになったし、そもそも人生100年の中で育休1年なんてわずか1%に過ぎません。それに、子どもをうまく寝かしつけたり短時間でリフレッシュする術を探ることで、段取り力や効率的に作業するコツも身に着きました。子どもの成長に合わせてアプローチを変える必要があるし、育休中に自分のモチベーションを上げる必要も感じました。こうした経験はキャリアの中断ではなく、その後のキャリアやマネジメントスキルの向上に役立つと思います。

久保田 中山さんの言う通り、出産サポートや育児の経験はそこでしか得られない貴重な価値があります。リーダーになった時、人の気持ちが分からないと限界がきますが、家事・育児を主体的にやってきた人はその部分のソフトスキルが格段にあがっている。部下と違って赤ちゃんは言うことを聞かなくて手ごわいし、夜泣きの対応なんて徹夜仕事より大変ですからね(笑)。育休経験は翌年のリターンはないかもしれないけれど、5年10年で見たらむしろキャリアアップは早いかもしれない。男性育休は女性のためと勘違いされがちですが、本当は男性のためのものでもあると思います。当社の男性育休取得率は平均と比べると高いけれど、まだ満足はしていません。本人やパートナーが希望する形で半年でも1年でも育休を取ることができ、納得いくキャリアを構築できる形を作っていきたいですね。

夫婦でパパ育休のことを話し、考えることを促すパパ育休冊子10万部を全国に配布する取り組みを支援。男性が当たり前に育休を取得できる社会を目指していく。
夫婦でパパ育休のことを話し、考えることを促すパパ育休冊子10万部を全国に配布する取り組みを支援。男性が当たり前に育休を取得できる社会を目指していく。

──最後にdoors読者へのメッセージをお願いします。

久保田 20年前に比べて世の中が大きく変わったように、読者世代にとって今の状況は「過去の話」になる日がくるはずです。ですから皆さんが結婚・出産する時は今より必ずいい時代になっていると信じて、キャリアもパーソナルライフも諦めずに幸せを追求してほしいですね。PwCの存在意義は「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」こと。ダイバーシティはジェンダーにフォーカスされがちですが、誰もが自分なりの働き方やキャリアパスを目指せるようになるのが理想です。監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務における専門性を結集したPwC Japanグループの約9000人がその発想を持って動き続け、社会にインパクトを与えれば、世の中が変わっていくと信じています。

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取材・文/加納美紀 写真/佐々木実佳