仕事で「当たり前」になっていることは多い。これまでの常識を打破し、生産性を上げつつ、顧客価値を実現しながら働き方を変えていく。営業職におけるそんな「次世代型」のモデルとは何かをテーマに据えた発表が2019年2月、都内で行われた。発表者は、モデル構築のため自ら仮説を立て、実証実験を行ったエイジョたち(営業職の女性)だ。

 このプロジェクトは2014年に始まった異業種女性営業支援「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」の活動の一環。発表と表彰は「新世代エイジョカレッジ・サミット2018」というイベントで行われ、2月実施の今回は3回目になる。審査を通過したチームがプレゼンした内容をリポートする。

製薬会社MR、存在意義を再認識

 「成功体験がモチベーションにつながった。営業ってやっぱり楽しい!」と声高らかに断言したのは、中外製薬の「チームCSK」だ。次世代の営業で主流になるだろうモデルは「コンシェルジュ型」であるという仮説を立て実験を実施、その結果「顧客満足度100%、継続希望96.8%」という大きな成果を得た。実験は顧客32人、社内からの協力者50人を得て行った。

 医薬品営業の一般的な形は「1人のMR(医薬情報担当者)が1人の顧客(医師)」を担当するというものだが、実験では「お品書き」(担当者の顔写真、名前、専門分野などを記したリスト)を顧客に事前に提示するようにした。そして顧客が自らのニーズに、より合った情報を提供してくれそうな担当者を指名する。会社全体でのコンシェルジュ型により、限られた面談時間で、的確な情報提供ができるようになったという。

 例えば安全性を専門とする担当者と同行することにより、顧客のニーズが、有効性より安全性にあったことが分かったり、医療制度専門の担当者と同行することで、顧客の関心に沿ったイベント企画開催に発展したりしたという。

 一方、育児や介護とのはざまで悩む社員にとって、「お品書き」のメンバーがフォローすることで、例えば時間短縮勤務でも安心して営業活動できるメリットがある。顧客の面談時間に合わせると長時間労働になりやすいためだ。

 業界では「MR不要論」という言葉がささやかれるなか、実験結果からは「価値ある情報提供ができるMRは必要」という力強い結論を導いた。エイジョの自信あふれるプレゼンが印象的だった。

見事大賞を受賞した「チームCSK」。「お品書き」という名前のインパクトや、顧客の要望をデータベース化して将来に活用することが、従業員と会社にとって成長力を与えるという点が高評価となった

営業はスーパーマンではない

 扱う商品が非常に多岐にわたる場合、営業とは直接関係しない仕事が膨れ上がることがある。その打破を図ったのが、富士通マーケティングの実験だ。

 同社チーム「FJM WAY」が打破したいと考えたのは「営業はすべてに対応するスーパーマン」という人々の意識だった。同社営業は、さながら「ITコンビニ」だと言い、ケーブル1本からシステムまで売るものが多岐にわたる。さらにシステムトラブル対応も求められることがある。そのために調整ごとや事務処理が多い。

 営業としては、調整や事務で手間取るよりは、顧客の課題を解決したり、事業を創造したりするために時間をもっと使いたい、という意図がある。

 そのために次世代型の営業モデルは「分業化」ではないかと考えた。現在の業務すべてを自分たちでやるべきか、それ以外の部門の人たちでも代行できるのか棚卸しをしたところ、94業務は4つに分類され、そのうち約70%は営業担当者でなくても代行できたという。

 この70%にメスを入れるため、営業経験の豊富なシニア層や育児中などの社員で構成する営業サポート職(コンシェルジュ)を設置した。こうした人々の支援は、業務知識やノウハウを持つため生産性を高めることにつながり、エイジョ5人が実験期間中(4週間)にコンシェルジュに仕事を依頼して創出できた営業時間は、総計92時間に上った。できた時間で顧客と向き合い、製品開発に新たな提案を行い、開発スピードをアップしたことで顧客から評価されたという。

 エイジョは会社に対してコンシェルジュの設置、無駄な業務の削減そして評価制度の充実の3つを提言したと言い、「私たちの実験結果から、会社では実際にシニア活用や、無駄な業務削減に向けた検討が始まりました」と報告し、「営業を持つ、ほかの業種でも導入検討ができると思います」と、エイジョらしくしっかり提案を忘れなかった

富士通マーケティング「FJM WAY」のチーム。審査員特別賞を受賞した。シニアなど多様な人材と連携し、若手がそうした社員から学んで成長できる点、提言が実際に会社を動かした点が評価された