子持ち社員に優しくしようとしたわけではない

 オフィスには、キッズルームなど特別な場所があるわけではない。あるのは、子どもが裸足で遊んだり寝転んだりできる土足禁止スペースとベビーゲートで仕切られた、ベビーラックやおもちゃが並んだ場所。数人の子どもが遊ぶ脇で社員は仕事にいそしんでいる。時には赤ちゃんを抱えたままパソコンで作業する社員の姿も。社員のパフォーマンスが落ちることはないのだろうか。「それは少なからずあるとは思います。でも、個人だけじゃなくて会社にも波があるし、お互いさま。優秀な社員に長く働いてもらうことは、会社経営を10年、20年の長い目で見れば合理的です

 子どももたまに連れてこられると慣れない環境に泣いたり落ち着かなかったりすることもあるが、毎日一緒に出勤すると、オフィスにいるのが日常になり騒ぐことも少なくなるという。

子連れ出勤の様子。社員の要望で「土足厳禁スペース」を確保した
子連れ出勤の様子。社員の要望で「土足厳禁スペース」を確保した

働けない、預けられない優秀な人材が応募

 子連れ出勤制度を利用した社員の一人が、体験サポートチームで働く竹田綾子さんだ。4人のママである竹田さんは、今年5月に4人目の子の育児休業から復帰したばかり。6年前にアルバイトとして入社したときは、2人目の子どもが産まれて7カ月だった。

 「子どもが小さかったのですが、働くことが好きなので就職先を探しました。すると人づてで子連れ出勤ができるこの会社を知りました。入社後は約7カ月間週4日の子連れ出勤を続けました。最初は本当に子どもが側にいて仕事ができるのか不安でしたけど、隣に座らせていると、意外におとなしくて。当時はカスタマーサービス担当としてお客様への電話対応をしていたのですが、それでも大丈夫でした」。竹田さんはその後2回の出産を経たが順調にキャリアを重ねている。

 また、子連れ出勤は働く親を支援するだけでなく、採用面でも恩恵をもたらしているという。「出産を機に仕事を辞めてまた働きたいと思っても、仕事をしていない状態では子どもを保育園になかなか預けられない。そのせいで働けない人が、当社の子連れ出勤制度を知って応募してきます。素晴らしいキャリアを持つ優秀な人がたくさん来てくださるので、うちはこの制度ですごく得しているんじゃないかと思います」と採用担当の土田真澄さんは言う。