軍資金を提供し楽しい経験を積んでもらう

 この会社で働くことを楽しいと感じてほしい――。そんな思いは、子連れ出勤だけでなく、他の取り組みにも表れている。特徴的なのが各社員の興味の範囲であらゆる体験に使ったお金を、毎月上限1万円まで会社が負担する「エクスペリエンス軍資金」という制度だ。レジャーだけでなく、子どもと一緒に作るプラモデルや、スペシャリティーコーヒーを買った費用も対象になる。「楽しい」を生むすべての経験が、ギフトを提供する仕事に生かされるからだ。

社員は軍資金を使って様々な体験をしている
社員は軍資金を使って様々な体験をしている

週4日勤務でもOK

 事業開発チームの畠田那穂さんは、食のECサイトを運営する会社からソウ・エクスペリエンスに転職。現在は食の体験ギフトを提供する加盟店の営業開拓などを担当する傍ら、プライベートでは軍資金を活用して、様々なことにチャレンジしている。「変わったレストランで食事をすることが多いです。資金の援助があるから、ちょっといいレストランにも行けますね(笑)」。そんな畠田さんは入社当初から週4日勤務を選択。残りの1日は大学で非常勤講師として働いている。「非常勤講師の仕事をぜひやってみたくて。両立できる会社はないかと探して、この会社を見つけました」

出産を控えている畠田さん。ただ、身近にロールモデルがたくさんいるので、産後の働き方に不安がないという
出産を控えている畠田さん。ただ、身近にロールモデルがたくさんいるので、産後の働き方に不安がないという

 働く人の希望をかなえる制度が浸透した背景にあるのは、優しさではなくあくまで合理性だ。オフィスには明るい声が響き、キッズスペースのパステルカラーに思わず顔がほころぶが、社内に決して緩さはない。多様な働き方が許されているからこそ強いプロ意識を持って働いていることが、社員たちの自信に満ちた言葉からも感じられた。

取材・文/川辺美希 写真/花井智子 構成/飯泉 梓(日経doors編集部)