働きやすさをどう実現するか皆で考える

 子育て中の社員などがテレワークやリモート勤務できる制度を整えている企業はかなり増えてきた。だが、利用する側から見ると課題は少なくない。

 例えば、制度としてはあっても実際には使いづらい雰囲気がある場合だ。柏原さんは以前に勤めていた会社で、出産後に復帰し、時短制度を利用していた。先輩ママたちもいる環境だったが「時短で働いたり、子どものことで休んだりするのは主に女性社員で、肩身が狭いと感じることがありました」。時短だと顧客への対応ができる範囲も限られ、出張のある仕事にも手を挙げにくいなど、モチベーションへの影響もあったようだ。

 現在の職場では、リモート勤務や子どもの病気による休暇などは、誰もが普通に利用するので「女性だけ、ママだけ」という壁を感じることはないという。外国籍の社員が3割、ワーママの社員が1割という多様性もあるのかもしれない。さらに、「リモート勤務なら時短ではなくフルタイムで働けます。周囲の協力があってですが出張にも行くように。やりたいと思うことができるとストレスが減りました」。

 初めに与えられた制度やルールありきではなく、現場から働きやすい環境を実現していこうという空気もあるようだ。Origamiには「部活動」と称して、社員の自発的な活動に会社が補助を出す制度がある。そうした部の1つ「ママ部」は、子育て中の社員が悩みや経験を共有しており、柏原さんもその一員だ。

 今年の夏、ママ部の社員から「夏休み中、学童が休みのときの子どもの預け先が見つからない」という声があった。そこで「ママ部のメンバーが会社に掛け合い、夏休み中に子どもを連れてこられるようにルールを決めて、オフィスの会議室を開放してもらいました」(柏原さん)。女性社員だけでなく男性社員の利用も多く、子ども同士も仲良くなったという。

コミュニケーションの透明性を重視

 こうした柔軟な働き方をいろいろな面から支えるのがデジタルツールの活用だ。フィンテック系スタートアップ企業のOrigamiでは、デジタルツールを使いこなして働くのは当たり前にも思える。だが一般的には、コミュニケーションの基盤をデジタルにすることで対面の会話が減ったり、他部署の状況が分かりにくくなったりするなど、全体の意思疎通が損なわれるケースは少なくない。変化の速い技術開発の現場ではそれが致命的なハンディになりかねない。そのためにOrigamiは、コミュニケーションの透明性を重視しているという。

 そうした考え方を体現する1つの例が本社オフィス。会議室や執務スペースのほとんどが透明な壁で仕切られ、誰がどこにいるか遠くまで見渡せる。学童が休みの間に子どもたちが集った会議室も、中の様子がよく見えるので、親たちも安心して働けたという。

 本社オフィスの中心にある、ホテルのロビーのようなラウンジスペースでは、思い思いに集まったり、打ち合わせをしたり、1人で作業に集中したりする社員の姿がある。週に1度、全社員が参加する会議「All hands」もここで開催される。

東京の本社オフィス内のラウンジスペース(写真:Origami提供)
東京の本社オフィス内のラウンジスペース(写真:Origami提供)