他部署のメンバーがチャットにくるのもウエルカム

 デジタルツールによって、コミュニケーションの透明性はどのように実現しているのだろうか。

 川原さんや柏原さんのように、遠隔地から参加する会議では頻繁にZoomを使う。名古屋、大阪、福岡各支社のメンバーが加わるZoomの会議も多い。

 全社員に向けた公式な情報の共有は、Facebookの企業向けプラットフォーム、Workplaceを利用。全社的な連絡事項、プレスリリースの告知、新入社員の紹介などのほか、毎週の全体会議の内容も録画してWorkplaceに共有するので、当日参加できなかった社員も確認できる。

 文書類はGoogleドキュメントで共有する。例えば議事録は会議と同時進行で、全員で見ながら作成。Zoomで遠隔会議をしながらその場で作成することも多い。「『このイベント、17時になってるけど18時じゃなかった?』など、会議中にすぐ確認できるのがいいですね」(川原さん)

 社内のプロジェクトや部署単位のコミュニケーションはSlackを使うが、単なるチャットにとどまらない。例えば対面で会話をした内容を、その場にいなかったけれど共有したほうがいい人や部署があれば、すぐにSlackで送ることはよくあるという。

 Slackで進行しているチャットに、他部署のメンバーが入ってくることも歓迎される。「部署間の情報共有って大事だと思いますが、物理的に離れていると『隣の情報が自然に入ってくる』ことがないので、いろいろな部署のチャットを常に見るようにしています。何かのイベントの話をしているところへ『それってどういうイベントですか?』などと突っ込みを入れることもあります」(川原さん)。支社のメンバーが「東京オフィスのメンバーが何を考えているか知りたい」とチャットに入ってくることもある。他部署や他プロジェクトのチャットでも入っていけて、受けるほうも歓迎するというカルチャーも、透明性を高める一因になっているようだ。

 技術系企業だからデジタルツールの活用が当たり前というわけではない。働きやすさを前向きに考え、オープンに情報を共有するカルチャーがあってこそ、新しい働き方が形になっていくのだろう。

取材・文/秋山知子(日経doors編集部) 写真/鈴木愛子