皆さんは、ピルに対してどんなイメージを持っていますか? 避妊法の一つとして認識している人も多いと思いますが、女性の体と妊娠について語る上で、実はなくてはならない大切な存在なのです。妊娠の基礎知識をお伝えしているこの連載、今回はピルのメリットについて解説します。お話を聞いたのは、産婦人科医の高橋怜奈さんです。

痩せ過ぎ、太り過ぎは妊娠しにくい

 仕事が忙しいと、つい乱れがちなのが毎日の食事。食生活は、将来の妊娠しやすさと関係があるのでしょうか。妊娠を望む人が日々の生活で気を付けるべきことの一つに、体重管理があると高橋さんは言います。

 「肥満は生理不順や子宮体がんの原因になります。体内の脂肪が増え過ぎると女性ホルモンのバランスが崩れることにより、排卵しづらくなり、結果的に妊娠しづらくなることがあります。痩せ過ぎも、妊娠を妨げる原因の一つ。人間は飢餓状態になると、脳が、生きていくために必要のない生殖機能から先にストップするよう、体に指令を出すんです。急激なダイエットをすると生理が止まるのはそのせいです」

 高橋さんは、まずは体重を正常なBMI値にとどめておくことが大切だと言います。痩せ過ぎは生理がストップするということはよくいわれますが、太り過ぎも女性ホルモンのバランスが乱れるというのは意外ですね。

ピルは排卵による卵巣のダメージを防ぐ

 働く20代・30代が、将来の妊娠のためにすべきこととしておすすめなのが、低用量ピルを飲むことだと高橋さん。ピルは、女性が主体的に避妊できる方法というイメージがありますが、妊娠のしやすさとピルには、どんな関係があるのでしょうか?

 第1回記事・妊娠をおさらい 誤解も多い性交渉のベストタイミング で説明したように、排卵の時、卵子は毎月、卵巣の壁を突き破って腹腔内に放出されます。壁を突き破るということは、毎月、排卵は卵巣にダメージを与えているということ、と高橋さん。女性が生涯で生む子どもの数が多かった時代に比べて、現代の女性は妊娠で生理が止まっている時間が短い分、このダメージを多く受けているといいます。

 「昔の女性は出産回数が多く、生涯の排卵回数が少なく、その分、卵巣のダメージは少なかったのです。現代は出産回数が減った分、生涯の排卵や月経の回数が増えて、子宮内膜症や卵巣がんも増えています。低用量ピルは、服用している間は排卵を抑制します。排卵は卵巣にダメージを与えますが、妊娠するために必要なこと。しばらく出産の予定がないのなら、卵巣をしばらく休ませておいたほうが、将来の妊娠のためにはいいんです。長期的なピルの服用によって妊娠しやすくなるという海外の論文もあります」