妊娠前の生活改善がポイント
では、妊活のために日々の生活でできることは何でしょうか。
調査によると、「食生活に気をつける」(31.6%)、「規則正しい生活をする」(28.5%)、「体を冷やさないようにする」(25.9%)、「適正な運動、適正な体重を心掛ける」(24.8%)といったことに取り組む人が多いようです。
妊娠中は食生活に注意すべきだということは知られていますが、実は妊娠前にも十分な栄養を取ることが大切だということは、まだ十分に知られていません。特に妊娠する前からの摂取が必要なのが葉酸です。
「葉酸は二分脊椎など、神経管閉鎖障害といった赤ちゃんの奇形を減らすため、妊娠前から取っておくことが必要です。食事以外にもサプリメントなどで1日400~800マイクログラムを補充することをお勧めします」と佐藤院長。
胎児の神経管が形成される妊娠初期の数週間に、十分な葉酸を摂取することが胎児の脳や脊髄、中枢神経系の発達を促すうえで重要です。葉酸とは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で枝豆、鶏レバーなどに多く含まれていますが、食事だけで推奨量を取るのが難しいといわれます。
また、亜鉛も生殖機能の維持に重要な役割を果たすミネラルですが、日本女性の8割が不足しているといわれます。「亜鉛は不足すると甲状腺機能低下の原因にもなります。男性の精子機能の維持にも必要ですから、パートナーと一緒に意識して取りましょう」(佐藤院長)。
さらに最近、不足が指摘されているのがビタミンDです。「着床率アップやAMH(抗ミューラー管ホルモン=卵巣の予備能の指標となるホルモン)低下にも関係があり、妊娠した後の妊娠糖尿病や低出生体重児を減らすことにもつながります」(佐藤院長)。ビタミンDが含まれる食品は魚、キノコなどと限られていますが、日光を浴びることで体内で生成することができます。地域にもよりますが、夏なら木陰で30分程度、冬なら手や顔に1時間程度、日に当たれば十分だといわれています。美容のためにサンスクリーンを塗る人は多いですが、手足だけは塗らずにおく、サプリメントも活用するなど、自分に合った対策を考えてみる必要がありそうです。
規則正しい生活は、妊娠率アップに直結します。正しい食生活と適度な運動は筋力の維持増進につながり、ホルモンバランスを整えて冷え性やストレス解消にも役立ちます。睡眠不足や睡眠の質の低下はホルモンバランスの乱れの原因になり、妊娠率の低下につながります。「特に男性にも積極的に生活習慣の改善に取り組んでほしい。男性の場合は2~3カ月サイクルで生殖細胞が生まれ変わるため、生活習慣を正せば精子の質が上がる可能性も高まります」(佐藤院長)
取材・文/竹下順子 構成/黒住紗織(日経BP総研ヘルシーマザリングプロジェクト)