いつかは出産したいと思いながらも今は仕事にまい進している女性たちに、「これだけは知ってほしい!」という知識をお伝えしているこの連載。今回は、産婦人科医の宋美玄さんにご登場いただきます。丸の内の森レディースクリニック院長として診察にあたる傍ら、メディアで妊娠・出産や性について、女性にとって重要な情報や正しい知識を発信している宋さん。いつかの妊娠のために一番大切なものは? と聞くと、意外な答えが返ってきました。

生理の回数は昔の9倍 様々な病気の原因に

 皆さんは、将来妊娠しやすい体を作るために日々どんなことに気をつけていますか? 今、具体的な対策はしていなくても、体の冷え対策などが頭に浮かぶ人が多いでしょう。でも、宋さんは「大事なのは毎月の生理を放っておかないこと」と話します。

 「毎月生理がくるのは健康なことだと思っている方もいるかもしれませんが、生理は体からの手紙でも、健康の証でもありません。今、子宮内膜症や女性特有のがんが増えているのは、生理の回数が昔より増えているから。生理が、子宮や卵巣の炎症の原因になるんです。初潮の年齢が早まり、出産回数が減ったことで、生涯にわたる女性の生理の回数は昔の9倍になっているんです

 昔は、16歳頃に初潮が訪れ、10代から何人も子どもを産むケースが多かったため、女性の一生における生理の回数は少なかったのだそう。生理が生殖機能にダメージを与えることは、過去記事・「妊娠せずに排卵し続けるリスク ピルで卵巣を守る発想を」でもお伝えしましたが、昔と比べてそんなに回数が違うとは驚きですよね。では、生理は具体的に、子宮や卵巣にどんな影響を与えているのでしょうか。

 「生理のとき、血液はすべて膣から外に放出されるわけではなく、卵管を通じてお腹の中へも逆流しているんです。これは、9割の女性の体で起こっています。そのとき、赤ちゃんが宿るための内膜が、血と一緒に違う場所にお引っ越ししてしまう。移動した内膜が子宮以外の場所で生理を起こしている状態が、子宮内膜症。卵管の癒着や子宮腺筋症、卵巣に血がたまるなどの原因になり、不妊を引き起こします。現代女性は、初潮を迎える10代初めから初めての妊娠がある30代ごろまでずっと生理があるというケースが多いので、子宮内膜症の女性が増えているんです」