「入社時には、まだ得意と言えるものがなくても、やる気と勢いで『自分の強み』を見つけだした」と言う、サイバーエージェントに勤める玉田理沙さん。「宣伝」という天職に出合うまでの葛藤と、仕事の魅力、今後の目標などを聞きました。

企画を社長にメッセンジャーで直接提案

 サイバーエージェント・宣伝本部でAbemaTVの宣伝を担当している玉田理沙さん(27歳)。番組の視聴数を上げるためにSNSを駆使し、どの媒体で宣伝するのか、タイミングも考慮し戦略を練り実践することで、番組をヒットに導く。

 生まれたのは徳島県。祖父と父の背中をいつも見て育った。

 祖父が衣料品卸売り業を起業し、父はネット通販に事業を拡大。家業を手伝う母の姿を見ながら育った玉田さんは、「『大人になったら働いて、経済的に自立できるようになりたい』と思うようになりました」と話す。

 関西での大学時代を謳歌し、就職活動で東京へ。

 就職活動中、東京のサイバーエージェントに強い関心を持った。結婚して出産しても、職場復帰している女性社員の姿が目に留まったからだ。大学時代の友達は大企業の一般職などに内定する中、自分が選んだのはベンチャー企業。「当時はまだサイバーエージェントを知る人も少なく、ベンチャー企業に就職する友人は珍しかったので、周りからは意外な顔をされました」

サイバーエージェントに勤務する玉田理沙さん。「私が入社した当時は、まだベンチャー企業に就職する友人も少なかったので、周りからは驚かれました」
サイバーエージェントに勤務する玉田理沙さん。「私が入社した当時は、まだベンチャー企業に就職する友人も少なかったので、周りからは驚かれました」

 内定後、玉田さんは思い切った行動に出る。「今、世の中ではキュレーションメディアがはやっています。このタイミングで、大人の女性向けのキュレーションメディアを作るといいと思います!」と社長に直接、Facebookのメッセンジャーを使い、企画案を伝えた。

 「とにかく勢いだけはあったので、会社の事情などは考えず即行動しました(笑)。社長や経営陣も『こんなに威勢のいい内定者も珍しい』と、私の提案を受け入れゴーサイン。入社からすぐに企画が動き出し、ゴールデンウイーク前までにキュレーションメディアを立ち上げるという緊急ミッションが与えられました」

入社後1カ月で新メディアをローンチ、しかし…

 チームは、デザイナーとエンジニアと自分の3人だけ。コンテンツ作りは自分一人。まずは媒体のターゲット層である30代女性を社内で必死に探した。仕事もプライベートも充実し、ファッションやメークも魅力的な女性の先輩方に声を掛け、お菓子を用意して時間をつくってもらった。「最近、どんなことに興味がありますか」「どんな情報なら読みたいですか」とコンテンツ作成の参考にするために意見を集めた。

 キュレーションメディアは立ち上がったものの、仕事量は多く、やってもやっても終わらない。一生懸命仕事をしたつもりでも自分が思ったようにアクセス数が伸びなかった。入社1カ月で勢いよくサイトがオープンしたが、その後、2~3年は葛藤の毎日だった。

 仕事そのものが向いているのか分からなくなった玉田さん。「仕事を辞めて早く結婚し、専業主婦になりたいと思った時期もあります。地元・徳島の友人にも専業主婦が多いし、自分の母も専業主婦だし。ストレスからか、社外の方との時間が増え、社外の人脈をつくることで満足していた時もありました。

 そんなとき社内の先輩に言われたんです。『仕事が中途半端な人ほど、社外に人脈を広げて満足しがちだよね』と。図星でした。確かに社内の人たちと向き合って考えることをせず、逃げていたな……と」

「仕事を早く辞めて、専業主婦になりたい。そう思うこともありました」
「仕事を早く辞めて、専業主婦になりたい。そう思うこともありました」

 これまでの自分を反省し、きちんと仕事に向き合った。すると、経験を積むごとに、やらなくてはいけないことの優先順位付けもうまくなり、メディアのアクセス数も増えていった。

 「キュレーションメディアの立ち上げを通して、企画のコンセプト作りから、記事の執筆、リリース、宣伝……と、あらゆる業務を経験できました。特に面白いと思ったのがウェブの『宣伝』の仕事。媒体選定やプロモーションのタイミングなど、宣伝の仕方を工夫するだけで、アクセス数が飛躍的に伸びるんです」

 玉田さんは自他共に認める「飽き性」。常に新しいことに触れていたいタイプで、面白いと思うとぐっとのめりこむ。そんな自分を夢中にする専門分野を、ずっと探していたという。